台湾海峡の平和と安定に向けて関係各国は対話を続け、緊張を緩和させていく必要がある。
中国軍は台湾を取り囲んでの軍事演習を10日までの3日間、行った。軍用機が台湾海峡の暗黙の「休戦ライン」である中間線を越え、南西の防空識別圏に進入した。国産空母「山東」も参加し、艦載機の発着艦を繰り返した。
軍事演習は台湾の蔡英文総統が訪米しマッカーシー米下院議長と会談したことへの対抗措置だ。
1979年の米台断交後、台湾総統が米国で下院議長と会談するのは初めてで、米政界の要人では最高位となる。米国は、蔡氏が中米訪問後に立ち寄ったもので、長年の慣例通りとし、中国に自制を求めてきた。
だが、中国は演習に踏み切り、「台湾独立分裂勢力と外部勢力による挑発への警告」と主張した。
今回の演習を受け、蔡氏が「台湾人は民主主義を愛し、平和を求めている」とし、軍事圧力への嫌悪感を示したことは当然だ。
米国も、中国が米台連携を口実に今後も軍事演習を重ね、「ニューノーマル(新常態)」をつくり出しかねないと警戒している。
中国は不測の事態を招きかねない軍事威嚇によって地域や世界の緊張を高めるべきではない。
中国の習近平国家主席は台湾統一が悲願で、武力統一の可能性にも繰り返し言及している。
これに反発する蔡氏は「(台湾と中国は)互いに隷属しないことを堅持する」とし、米国との関係緊密化を進めてきた。
昨年8月に当時のペロシ米下院議長の訪台時も中国は台湾周辺で大規模軍事演習を行った。日本の排他的経済水域(EEZ)内にも弾道ミサイル5発を落下させた。
この時に比べて今回は「対抗措置の強度は控えめ」と中国の外交専門家は分析する。やみくもな軍事威嚇で台湾の民意を中国から引き離してしまうのは得策ではないとの判断があるのだろう。
習指導部は来年1月の台湾総統選を強く意識している。蔡氏が訪米したタイミングに合わせるように、対中融和路線の最大野党・国民党の馬英九前総統を中国に招待し、歓待した。
台湾で国民党の支持が広がるような友好ムードの演出など台湾世論の分断を図る「認知戦」も強化している。しかし、過度な介入を台湾住民の多くが望んでいるとは思えない。
台湾海峡の不安定化は、日本の安全保障にも直接影響する。
2日の日中外相会談は、意思疎通の継続で一致した。日本は、問題があるからこそ対話が必要だとの立場を取る。
日本は、長年にわたる日中交流の歴史も踏まえつつ、同盟国の米国をはじめとする関係諸国と連携し、東アジアの安定を図るため、外交努力を重ねる責務がある。
