新年度がスタートした。学校では子どもたちが、新しい教科書で勉学に励んでいるはずだ。
教科書はデジタル化が進んでいる。教育委員会や学校は、子どもの学びへの効果と課題をしっかり検証し、授業を進めてほしい。
文部科学省は2024年度から小学校で使用される教科書の検定結果を公表した。合格した11教科149点全ての教科書に2次元コード(QRコード)が記載され、デジタル対応が進展した。
英語では24年度から、小学5、6年でデジタル教科書の先行導入が決まっている。
出版社は、QRコードを通じて音声や動画を視聴する教材を充実させた。QRコードを見開き2ページに一つの割合で増やした教科書が目立ち、よりネーティブの発音を確認しやすくなった。
近年は、児童全員が学習端末を持ち、電子黒板を使う授業が増えている。
デジタル対応が増えれば、子どもの関心に応じた学びが広がり、主体的な学習を後押しする効果が期待される。
情報通信技術(ICT)が進化する近未来へ向け、教育の情報化を進める方向性は理解できる。
一方、デジタル教育は過渡期で課題も多い。しっかりと見極めていかねばならない。
デジタル教科書は学校教育法の改正により、19年度から小中高の授業で使えるようになったが、考える力や知識の定着などの面でデメリットが生じていないか、明確な答えは得られていない。
教員はデジタル対応に必要なスキルを身に付けねばならない。デジタル教科書の指導に不慣れな人もいる。子どもたちの力を引き出す指導方法を磨いてもらいたい。
学校現場は教員の多忙が問題になっている。デジタルへの対応が負担にならないよう環境を整えねばならない。
インターネットを通して子どもたちが接する多くの情報の中には間違ったものもある。情報の正しさを見定めるファクトチェックについての指導も大切だ。ネットに安易に頼らず、辞書や図鑑で調べる手法も教えてほしい。
学習指導要領が重視する「主体的・対話的で深い学び」を実現する仕掛けも大多数の教科書が取り入れた。あえて間違った考えを載せ、なぜ誤っているかを考えることで理解を深めるものもある。
新型コロナウイルスに関連する記述もさまざまな教科で見られた。感染禍で起きた差別の事例を挙げ、差別のない社会にするために大切にしたい心の在り方を考えさせたことは、評価できる。
多様性を強く意識し、LGBTなど性的少数者への配慮やジェンダー平等の課題に向き合う教科書が多かったことも、今回の検定結果の特徴だ。
気になるのは、道徳の教科書で「伝統と文化の尊重、国や郷土を愛する態度」の扱いが不十分だとして、修正を求める検定意見が大幅に増えたことだ。
道徳は多角的に考える力を重視する。本来は内面で育まれる愛国心を、教育が押し付けるような修正は懸念される。
