国民の安全に関わる情報発信には、速さとともに正確性が求められる。訂正を繰り返すうち、緊張感が薄れることを懸念する。
ミサイル発射は決して容認できない。国際社会を脅かす北朝鮮の愚行に改めて強く抗議する。
政府は13日、北朝鮮が午前7時22分ごろ、少なくとも1発の大陸間弾道ミサイル(ICBM)級のミサイルを日本海側へ発射したと発表した。落下地点は「分析を進めている」としている。
政府は午前7時55分、全国瞬時警報システム(Jアラート)で、午前8時ごろ北海道周辺に落下するとして避難を呼びかけた。
自衛隊によると、日本の領域内へのミサイル落下予測は初めてだ。政府関係者によると、当初は北海道南西部の陸地に落下する恐れがあると推定していた。
しかし政府は午前8時16分、自治体向けの速報システムEm-Net(エムネット)で「落下の可能性がなくなったことが確認されたので、訂正する」と伝えた。
岸田文雄首相は「判断は適切だった」と強調し、Jアラート発令に問題はないとの認識を示したが、情報が不正確だったことの影響をきちんと自覚すべきだ。
通勤通学時間と重なった道内では混乱が広がった。JRや地下鉄などは運転を見合わせ、札幌市教育委員会は一時、子どもの登校自粛を呼びかけた。
憂慮するのは、ミサイル発射を巡るJアラートなどの誤報が続いていることだ。
昨年10月には、ミサイルが青森県上空を通過したにもかかわらず、発令先に本来不要な東京都の島しょ部9町村が含まれていた。
翌11月には、日本上空通過の2分後に本県などで避難を呼びかける発令遅れがあり、実はその上空通過も間違いだったという二重の誤りがあった。
今年2月には、政府内の情報伝達ミスから、実際は2発だったミサイル数を報道各社が「3発発射」と速報した。
国民の信頼を得るには、発射情報の分析や落下地点の特定などの精度を上げなくてはならない。
政府は他国領域のミサイル基地などを破壊する反撃能力(敵基地攻撃能力)を保有するとしたが、情報収集能力が乏しくては誤った判断を導きかねない。
日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の正常化を踏まえ、日米韓3カ国の情報共有を一層強化していくことが必要だ。
一方、北朝鮮の弾道ミサイル発射は今年9回目で、固体燃料エンジンを搭載した新型弾道ミサイルの可能性があるという。
固体燃料型は即時発射が可能で発射兆候を探知しにくい。日米韓にとっては一段と脅威が高まる。
関係各国は協調して、国連安全保障理事会決議への明らかな違反行為を即刻やめさせるべきだ。
