長引くガソリン価格の高騰に歯止めをかけるため、政府は全国一律の補助金で石油元売りの卸価格を抑える異例の措置を発動した。
ただ、消費者が実感できるような効果が出るかは不透明で、高値は今後も続く恐れがある。
政府は暮らしや経済への影響にきめ細かく目配りし、生活をしっかり支えてもらいたい。
補助制度は昨年秋、政府が導入を決めたもので、ガソリンの平均価格が1リットル当たり170円以上となった場合、元売り業者らに1リットル当たり最大5円を補助する仕組みだ。
昨年からの原油高に伴い、レギュラーガソリン1リットル当たりの平均小売価格は上昇傾向が続き、24日時点では山形など20都府県で170円を超えた。
2008年9月以来、約13年4カ月ぶりの水準で、本県も168円30銭に値上がりした。
燃料の高騰は、車での移動が多い本県など地方や、運輸業、農漁業など多くの業界の経営を直撃している。
補助額は原油市場の動向を踏まえて毎週見直され、今回は3円40銭を補助する。対象はガソリン、灯油、軽油、重油の計4種類で、今年3月末までの時限措置となる。
注視したいのは、消費者にどの程度抑制効果が届くかだ。
ガソリンなどの店頭価格は人件費や競争環境などを考慮して小売業者が決めている。
近年は、人口減や乗用車の保有率の低下などで経営環境が厳しく、競争が激化し卸価格が上昇しても店頭価格に転嫁できていない店舗もあるという。
こうした状況のため、小売価格はそれほど下がらないとの見方がある。
価格に関する消費者の苦情や問い合わせが殺到し、混乱を心配する業者も少なくない。
政府は抑制策について周知を徹底すると同時に、効果をしっかり見極めねばならない。
懸念されるのは、ウクライナ情勢の緊迫化などによる原油の高止まりが今後も続くとみられることだ。
県内の運輸業者からは補助金について「一時しのぎにしかならないのではないか」と不安視する声も出ている。
ビニールハウスの暖房代や漁船の燃料代がかさむ農漁業者にとっても死活問題だ。
今年は積雪が例年を超えた地域もあり、暖房や融雪に灯油を多く使う本県では家計へのダメージも大きい。
離島など燃料の運送費がかさみ、小売価格がもともと高い地域には深刻な影響が生じる恐れがある。
政府は補助金のほかに石油備蓄の放出を3月以降に実施する方針だが、放出量は国内消費量の2日分ほどで、価格への影響は限定的とみられる。
政府は、地域や産業に与える影響の大きさを十分に考慮し、高値が続く場合には追加対策を含めた長期的な施策を講じる必要がある。産油国へも引き続き、原油の増産を粘り強く働き掛けてもらいたい。
