観光客増や雇用創出、税収確保への期待の半面、ギャンブル依存症や治安悪化などが懸念される。
対策が十分なのか慎重に検討し、懸念を払拭しなければならない。2029年開業ありきで前のめりになるのではなく、準備の徹底が不可欠だ。
政府は14日、大阪府・市が提出したカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の整備計画を認定した。政府認定は初で、日本でのIR開業へ大きな節目となる。
府・市は米大手MGMリゾーツ・インターナショナル日本法人とオリックスを中核株主とする事業者と組む。25年の大阪・関西万博の会場にもなる人工島・夢洲(ゆめしま)を予定地とする。
年間来場者数は約2千万人、経済波及効果は近畿圏で年間約1兆1400億円と試算している。
岸田文雄首相は「25年の大阪・関西万博開催後の関西圏発展に寄与する」とした。
政府が計画を認めた背景には、IR誘致が争点の一つになった9日の府知事選、市長選のダブル選挙で、推進派の大阪維新の会が圧勝したことがあるとみられる。
ただ、共同通信が実施した出口調査では、誘致反対が45%に上り、賛成は52%だった。選挙結果だけでIR推進にも同意を得たと考えるのは早計だ。
課題は山積している。
予定地は土壌汚染や液状化への対策が必要で市は約788億円を負担する方針だ。渋滞など生活環境の悪化や暴力団関係者の関与などを案じる声もある。
何よりも、ギャンブル依存症の懸念がつきまとう。
IR整備法でカジノが解禁されたが、海外カジノでは深刻な依存事例も報告されており、日本政府は依存症が増えないよう「世界最高水準の規制」をするという。
対策の柱は入場制限で日本人客は週3回、月3回までとする。ただ、1回で24時間の滞在が認められ、3回とも日付をまたげば週6日通うことも不可能ではない。入り浸りになりかねないなどと反対派から批判が出ている。
衝動を抑制できなくなるギャンブル依存症は高額な借金や人間関係悪化を招く場合もある。日本では、依存症経験が疑われる人は推計で300万人以上とされる。
整備法は最大3カ所まで整備できると規定しているが、全国的な盛り上がりは見られない。
政府は、長崎県の計画については審査継続とした。事業資金確保のスキームに不透明さが指摘されたことなどが理由だろう。
横浜市では、21年市長選でIR誘致が争点となり、推進派だった前市長が反対派に敗れ、誘致方針は撤回された。
大阪でIRが開業に至れば日本のモデルケースとなる。政府と自治体は慎重に対策を練り、国民の不安をなくすよう努めるべきだ。