先日襲来した黄砂で花粉症の症状が悪化した人もいたのではないか。黄砂の影響で花粉が爆発するような現象が起こり、重症化につながる恐れがあるという
▼民間気象会社「ウェザーニューズ」のウェブサイトで知った。黄砂や、微小な粒子状の大気汚染物質「PM2・5」などが接触すると花粉の細胞壁に亀裂が入る。そこから水分が入り込んで膨張し、破裂するらしい。爆発すると細かく砕け、アレルギー物質が鼻や喉だけでなく、気管支や肺に到達する可能性がある
▼花粉症に悩む人にとっては、爆発と聞くと身震いがするのではないか。そう思っていたら、ぞっとするような爆発が起きた。選挙の応援演説に臨んだ岸田文雄首相のそばに筒状の物体が投げ込まれ、ごう音を立てて爆発した
▼花粉の爆発は黄砂が引き起こす。首相の演説会場での爆発は、何が引き金になったのか。昨夏の参院選の際に安倍晋三元首相が銃撃された事件を思い起こしてしまう。ただ、この原稿を書いている時点では、今回の事件の動機や背景は判然としない
▼共通するのは選挙活動中の政治家が狙われた点だ。民主主義の象徴である選挙を根底から覆しかねない。どんな背景があるにせよ、こうした行為に選挙が妨げられることがあってはならない
▼暴力により民主主義が砕け散ることも起こり得る。選挙活動の安全は守らねば。一方で、政治家と有権者が触れ合う機会も大切だ。どう両立させるか。今回の爆発は私たちの社会に難しい命題をつきつけた。
