北海道・知床半島沖の観光船「KAZU 1(カズワン)」沈没事故は23日で発生から1年となった。乗客乗員26人のうち20人が死亡し、6人は行方不明のままだ。
第1管区海上保安本部と道警は22日、積雪などで昨年12月に中断した海岸部の捜索を再開した。24日まで行う予定だ。行方不明者が発見されることを願いたい。
事故を巡っては、船体の不備や悪天候が予想される中での出航判断などの問題点が次々と判明した。教訓を踏まえ、船の安全対策を徹底しなければならない。
事故1年を前に、オンラインで会見した乗客家族たちは、運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長が説明責任を果たしていないと批判した。国や日本小型船舶検査機構(JCI)の検査の在り方にも問題があったと指摘した。
1年たっても事故の全容は解明されておらず、家族のいら立ちや無念さは察するに余りある。
運輸安全委員会が昨年12月に公表した原因調査の経過報告では、甲板にあるハッチ(昇降口)のふたが密閉されないまま出航し、高波で揺れて開放され、海水が船倉などに流入したと推定した。
事故当日は強風・波浪注意報が発令されており、安全委は「出航中止条件に達する恐れが明らかだった」と指摘した。
海保は社長らを業務上過失致死容疑で捜査している。ハッチの不具合や出航判断の是非が焦点となりそうだが、自然現象が引き金になった事故の事実特定は難しく、目撃証言もない。立件には年単位の時間がかかるとの見方がある。
しかし真相を明らかにするために、徹底した捜査を求めたい。
実務経験がほとんどなく資格要件を満たしていなかった社長が運航管理者を務めるずさんな管理体制が明らかになった。不備を見落としてきた国などの指導の甘さも浮き彫りになった。
事故後、国土交通省は、安全対策を盛り込んだ海上運送法などの改正案をまとめた。今国会で審議されており、早ければ月内にも成立する見通しだ。
改正案は、小型旅客船の事業認可を原則5年の更新制とする。運航管理者には法令や海に関する知識を問う資格試験を設ける。行政処分や罰則も強化する。
新たな安全対策は、講じるだけで終わりではない。きちんと実行してこそ意味がある。
知床半島沖で観光船を運航する3社は、安全運航への自主ルールを定め、今シーズンの営業を28日に始める。
ただ安全委の最終報告が示される前の営業再開には、遺族から「事故の教訓は生かされるのか」と懸念する声もある。
間もなく大型連休に入る。本県でも観光などに携わる事業者は、改めて安全意識を高めていかなければならない。
