今年の穀雨は20日から5月5日まで。二十四節気でいう、春の柔らかな雨に百穀も潤う季節である。あす25日は「初任給の日」。英語でいう「ファーストペイデー」だ

▼社会人となった新人たちが、雨を浴びた穀物が芽を出すように、職場にも少し慣れるころ。そんな時期に手にする給料だ。多くはアルバイト経験があるだろう。でも、家族や職場の期待を背負って手にするお金は格別のはずだ

▼今月、デジタルマネーで支払う「デジタル給与」が解禁された。新人当時、現金の手渡しだった世代からは隔世の感がある。給料を受け取るのも使うのもスマホアプリで、というのが当たり前になるのか

▼民間シンクタンクの産労総合研究所は先月、いまの流行になぞらえた新入社員のタイプを発表した。2023年度は「可能性は∞(無限大) AIチャットボットタイプ」。急速に発達する人工知能の自動対話システムに例えた

▼オンラインでのコミュニケーションに慣れた世代で、対面形式は少し苦手。開発途上のチャットボットのように、とっぴな発言もする。だが先輩が丁寧な助言や適切なデータを与えれば、成長は無限大だ。そんな期待を込めたのだろう

▼現代の労働者は、気を抜けば自分の仕事もAIに奪われかねない時代を生きる。デジタルマネーが広がる一方、来年は現金の新札が登場する。1万円の顔は福沢諭吉から渋沢栄一に変わる。さて新人たちは、渋沢さんとさほど対面しなくとも暮らしていける日常を送るのだろうか。

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