戦闘が激化する危険な地から、邦人やその家族らを無事退避させたことは一つの成果だ。政府は救出作戦を検証し、今後の対応力を高めてほしい。

 国連や他国の協力がなくては救出は困難だった。政府は各国と連携し、現地の安定に向けても尽力してもらいたい。

 政府は25日、アフリカ北東部スーダンの首都ハルツームで退避を希望した全在留邦人の国外退避が完了したと明らかにした。

 周辺国ジブチに待機していた自衛隊輸送機をスーダンに派遣し、北東部ポートスーダンで45人を乗せてジブチに輸送したほか、13人がフランスや国際赤十字の協力で出国し、計58人が退避した。

 在留邦人は約60人で、退避を希望しない人が少数いる。岸田文雄首相は「状況の変化にも対応するべく支援を続ける」と述べた。残留者が退避を希望した場合の態勢も整えるべきだ。

 政府は今回、スピード重視で対応した。2021年のアフガニスタン情勢悪化の際に対応が遅れたことの教訓が大きい。

 自衛隊の活動拠点があるジブチに早期に自衛隊輸送機を派遣、情報収集に努めた。救出は正規軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の停戦期間中を想定した。

 しかし、停戦合意は何度も破られ、ハルツームは市街戦で外出も難しかった。邦人の滞在先もばらばらで、戦闘中の都市で邦人を集め、危険を避けて避難するのは困難な任務だったに違いない。

 今回改めて認識させられたのは、国際連携の重要さだ。

 比較的情勢が安定しているポートスーダンまで陸路で千キロ以上に及ぶ移動では、外務省は日本単独では危険だと判断した。

 国連と連携して長い車列を組み、平時の倍以上の時間をかけ慎重に進んだほか、外交関係が正常化した韓国、経済・安全保障分野でつながるアラブ首長国連邦(UAE)に協力を呼びかけた。

 日本の集結地に間に合わなかった邦人5人は、韓国が迎えに行きバスに同乗させ、移動は現地情勢に詳しいUAEが主導した。

 これとは別に、フランスや国際赤十字の協力を受けて邦人がジブチやエチオピアに移動した。

 政府は、退避邦人の生命に関わることを理由に、詳細な説明を避け情報管理を徹底した。今回のケースについて可能な限り情報を公開し、今後の安全対策を高める議論に生かさねばならない。

 スーダンでは軍とRSFが新たに停戦に合意したが、戦闘が続いているという。市民もハルツームから次々脱出している一方で、バス代が高騰し、金銭的に余裕がない人は身動きが取れない状態だ。

 人道的観点からも一刻も早く戦闘を終わらせ、情勢の安定化を図る必要がある。政府は各国とともに働きかけを強めてほしい。