日本海沿岸諸国との交流が、新潟県の発展の鍵を握っていることは間違いない。環日本海経済研究所が移行された県立大学が北東アジア研究の拠点となり、企業などの交流を後押しする役割を果たすことを期待したい。
県などが出資する環日本海経済研究所が解散し、県立大の北東アジア研究所として新たなスタートを切った。
財政危機を受けた県の出資法人見直しの一環として行われた改革で、極東ロシアや中国、韓国、北朝鮮、モンゴルなどを専門とする研究員6人が移籍した。
英文略称の「ERINA(エリナ)」は引き継がれ、県立大の頭文字を付けて「ERINA-UNP」となる。
新エリナは北東アジア各国の経済社会に関する研究や国内外の研究者との連携、学術成果の企業や自治体などへの提供を行うとしている。北東アジアを巡る研究拠点となることを目指してほしい。
エリナは1993年、本県が音頭を取って近隣県や新潟市、企業などの出資により、官製シンクタンクとして設立された。
冷戦の終結を背景に、ロシア極東や中国東北部、朝鮮半島などとの環日本海経済圏の構築に向けた推進役を期待された。
しかし、ソ連崩壊後の極東で市場経済への移行は期待したようには進まず、中国は東北部より主に南部沿岸地域に投資を集中した。さらに北朝鮮による日本人拉致問題が発覚し、環日本海経済圏の実現は遠のいていった。
とはいえ、対岸交流に本県の活路を見いだす考え方に間違いはない。人口減少が進み、県勢の衰退がいわれる中ではなおさらだ。本県は首都圏に最も近い対外拠点となり得る。
旧エリナはこの間も地道に各国の経済社会情勢について調査を行い、国際会議を開くなどしてきた。新エリナには蓄積した知見や人的ネットワークを生かし、交流促進と新潟の拠点性向上に貢献してもらいたい。
県の出資法人見直しを巡る議論では旧エリナに対し、「県経済にどれだけ貢献しているか分からない」と厳しい指摘もあった。それだけに新エリナには、産業界への情報提供や助言などには特に力を入れて取り組んでもらいたい。
研究員は県立大の教授や准教授として学生の教育にも携わる。北東アジアと本県をつなぐ人材を多く育てることは何よりの地域貢献といえる。
ロシアによるウクライナ侵攻は続き、北朝鮮は拉致被害者を帰国させないままミサイル発射を繰り返している。
取り巻く環境は極めて厳しいが、「日本海時代」に向けて先人が残してくれた「種火」を県立大エリナが引き継ぎ、大きくしてくれることを望む。