原発の安全に影響はないとはいえ、地域の住民を不安にさせる事態が続くことは好ましくない。
核物質防護体制を巡る不備が相次ぎ、原子力規制委員会から是正措置命令を受けている東京電力柏崎刈羽原発で、今年に入り2件の火災が発生した。
1月17日には、原発構内にある免震重要棟の会議室で、ノートパソコン1台と机の一部を焼いた。火災警報を受けて社員がノートパソコンから火が出ているのを発見し、消火器で消した。燃えたのはバッテリー部分とみられる。
この日は、東電の小早川智明社長が県庁で花角英世知事と面会していた。小早川氏は面会後の取材に「人為的なものではないと考えている」と語った。
4月11日には、5号機ランドリ建屋1階にある洗濯機が燃える火災があった。放射性物質を扱う管理区域内で使う作業服を洗濯する施設で、2台のうちの1台から火が出たという。
原子力規制委員会の山中伸介委員長は2件の火災について、いずれも原子力の安全には関係ないとの見解を示している。
ランドリ建屋で火災があった日の会見では「原発の中で火災が発生するというのはどの場所でも好ましいことではない」と東電に注意を促した。
その通りだろう。原因究明と再発防止に努めてもらいたい。原子炉の安全を損なう事態に直結しなくても、核物質を扱う原発構内で火災がたびたび起きれば住民が心配するのは当然だ。
原発の警備は厳重だ。外部からは容易に侵入できない。
それだけに、構内で何が起きているのか、住民がリアルタイムで知ることは不可能だ。
内部が見えないことが住民の不安の根底にあるだろう。中越沖地震では、3号機変圧器で火災が発生した。立ち上る煙は、地震で被災した住民の不安を増幅した。原発で働く人は、こうした地域の思いに想像力を働かせてほしい。
柏崎刈羽原発の安全性を議論する住民組織「原発の透明性を確保する地域の会」は4月12日、委員の任期2年の総括として要望書を国や東電などに提出した。
東電には「原発運営の重大な責務を自覚し、高い規範意識と自己浄化能力を有する社員の育成と企業風土醸成」を求めた。地元の意識を反映したものとみていい。
規制側も要望書に記された思いを理解した上で、東電を監視してもらいたい。
原発の安全確保は一義的に事業者の東電に責任がある。東電は、構内で使う電気機器類の日常的な管理にも気を配る必要がある。
核物質防護体制の不備で東電への信頼が揺らぐ中、火災はさらなる不信を招きかねない。東電は住民の安心を高めるために、努力を怠るべきではない。
