将来にわたる物流の安定化と、運転手の労働環境改善との両立を図らなければならない。

 効率的な輸送体系を築くには、業界内外の連携強化とともに、消費者の意識変革も求められる。

 トラック運転手の残業規制強化により物流業界の人手不足が懸念される「2024年問題」への対応が急務だ。24年4月から運転手の残業上限を年960時間に規制する労働基準法が適用される。

 運転手は全産業の中でも働く時間が長い。長時間の荷物待ちや、契約にない荷役作業を担わされるケースもあり、働き方改革が求められていた。

 荷主に対する立場が弱く、給料が上がりにくいといわれ、募集しても人が集まりにくいことも問題だ。労働条件と賃金の両面で待遇改善を進めなくてはならない。

 24年4月以降は輸送能力の低下により、荷物の配送遅れといった混乱の発生が想定されている。

 野村総合研究所の推計では25年に全国の荷物総量の約28%、30年は約35%が運べなくなる。本県は25年に約30%、30年に約39%に及ぶという。輸送網のパンクを招かないよう準備を急ぐ必要がある。

 競合する複数の物流業者が協力し、同じ所に運ぶ荷物を1台にまとめるのは有力な方法の一つだ。

 長距離輸送時に運転手の交代や荷物の積み替えができる中継地点を増やす取り組みも求められる。

 一度に多くの荷物を積める船や鉄道の利用拡大も有効だ。

 JR旅客各社は、新型コロナウイルス禍による乗客激減などをきっかけに、生鮮品などを新幹線で運ぶ貨客混載に着手している。

 専門家は、車両への専用搬送具などハード面を整備し、多くを運べるようになれば、潜在的なニーズを掘り起こせると指摘する。

 複数のスーパーが仕入れで連携し、食品の計画発注で積載効率の高い配送を目指す動きもある。物流業界の負担軽減に向けた他業界の取り組みにも注目したい。

 ウイルス禍に伴う巣ごもりでインターネット通販の需要が増えており、手間のかかる再配達を減らすことも欠かせない。

 例えば、配達日時の指定やまとめ買い、宅配ボックスや玄関前に荷物を置く「置き配」の利用など、消費者側が意識を変えることでできることもある。

 商品が通常より遅く届く配達を指定した人にポイントを手厚く還元する仕組みを進めている事業者もある。消費者は急がない品物を注文する際は、こうした選択肢も活用したい。

 岸田文雄首相は6月上旬をめどに「2024年問題」に対応する政策パッケージを取りまとめるよう指示した。

 課題を整理した上で、実のある対策を講じることが不可欠だ。

 官民で危機感を共有し、知恵を出し合いたい。