このままの内容で改正案が成立すれば、難民保護に深刻な影響を残す。参院は法案の問題点を解消し、国際的にも評価される中身に修正するべきだ。

 外国人の収容・送還に関するルールを見直す入管難民法改正案が12日、参院で審議入りした。

 改正案は、不法滞在などで強制退去を命じられても送還を拒む外国人の退去を進め、入管施設の長期収容を解消するのが狙いだ。

 現行法では難民申請中の外国人は強制送還できないが、改正案は申請中の強制送還停止を原則2回に制限し、3回目以降は「難民認定すべき相当の理由」を示さなければ送還が可能とした。

 だがこれでは、迫害を受ける恐れがある外国人を母国に帰す可能性があり、問題が大きい。

 昨年は3人が3回目の申請で難民に認定されており、2回の制限では、認定すべき人が漏れる可能性を否定できない。

 出入国在留管理庁によると、強制退去となっても帰国を拒む外国人は昨年末で4233人に上る。母国に戻れば命に危険が及ぶ恐れがある人もいるだろう。

 日本の難民認定率は先進諸国と比べて極端に低い。認定されるべき人が認定されなければ、申請を重ねるしかないのが現実だ。

 難民申請を重ねている外国人は「難民を国に帰す法律を作れば死ぬ人が出る」と訴えている。不安に思うことは理解できる。

 改正案には国際的な批判も強い。国連で加盟国の人権状況を調査する特別報告者は4月、「国際人権基準を下回っており、徹底的な見直しを強く求める」とする公開書簡を日本政府に提出した。

 3回目の難民申請から送還対象とすることには「重大な人権侵害を受ける可能性のある国に、いかなる個人も移送しないという国際人権法の下での義務を喚起する」と指摘している。

 日本の人権感覚が問われていることを重く受け止めるべきだ。

 非正規滞在者らを退去させることを任務とする入管庁が、受け入れる立場の難民認定も担当する制度にも無理があるだろう。

 衆院の審議では、立憲民主党が要求した難民認定の第三者機関設置を巡り、与党がいったん「設置について検討する」と付則に盛り込む案を示したが、立民が不十分としたため削除された。

 日本維新の会の要望を盛り込んだが、入管庁職員への研修規定創設など微修正にとどまった。

 参院審議に向けて、立民や共産党などは、難民の保護を柱とする対案を国会に提出した。入管から独立して難民申請を審査する第三者機関を新設するほか、収容期間に上限を設け、送還の判断などに裁判所が関わる内容だ。

 外国人の人権を守れなくては国際社会の信用は得られない。参院審議で抜本的な修正を求めたい。