国際情勢が不安定化し、核使用さえ懸念される中での会議だ。戦争被爆地・広島で開催する意義を踏まえ、国際的な対話と融和、核廃絶に向けて、世界を動かしていく場としたい。

 先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)が19日、開幕する。

 岸田文雄首相が広島市の平和記念公園で各国首脳を迎え、原爆の脅威や被害実態を展示した原爆資料館を視察した後、議論に入る。

 G7首脳の資料館訪問は、平和を希求する尊さを発信する機会となる。まずは被爆の実相にしっかり目を向けてほしい。

 討議は世界経済など多岐にわたるが、中でも喫緊の課題はロシアによるウクライナ侵攻だ。

 ウクライナを巡っては、先週新潟市で開かれた財務相・中央銀行総裁会議で、支援は必要な限り続けられると確認した。

 首脳声明では、可能な限り最も強い言葉でロシアを非難し、「制裁回避の試みに対抗」と明記する方向で調整している。

 一刻も早い停戦へG7は改めて結束し、制裁回避ではG7以外の国との連携も探る必要がある。

 ロシアによる核の威嚇も厳しく非難するべきだ。

 岸田首相は、サミットで「核兵器のない世界」への決意を発信する考えだ。会議初日に核軍縮に関する成果文書も発表する。

 文書には、米英仏中ロの5カ国に核保有を認め、他の国の保有を禁じる核拡散防止条約(NPT)を核軍縮の礎とし、核不拡散体制の強化を明記する。

 核軍縮機運の醸成を狙うが、実際はロシアの侵略や中国の核戦力強化で機運は後退している。米ロ間の新戦略兵器削減条約(新START)履行をロシアが停止し、核軍縮交渉も進展していない。

 G7の議論は核軍縮が軸だが、一方で、核兵器の開発から威嚇、使用まで一切を違法化した核兵器禁止条約が発効するなど、国際社会が積み上げてきた核廃絶の動きを忘れてはならない。

 広島サミットの開催を受けて、被爆地を中心に、核廃絶を求める声が広がっている。

 岸田首相は核廃絶への責任があることも自覚するべきだ。

 会議では、海洋進出を強める中国をにらんだ結束確認もテーマとなる。しかし対中政策では経済関係の期待があるフランスやドイツと、日米で温度差がある。

 生成AIの規制も議論になる。必要性を巡る各国の立場は異なり、議長国の日本は難しいかじ取りを迫られる可能性がある。

 18日夜には岸田首相とバイデン米大統領が会談し、北朝鮮の核・ミサイル開発に抑止力強化で連携することなどを確認した。

 サミットでは北朝鮮による日本人拉致問題も議題になる見通しだ。解決への糸口を見いだすためにも、十分な議論を求めたい。