国際社会を対立ではなく協調へと導かねばならない。世界の分断を修復し、平和で安定した国際秩序を築けるかが問われよう。
21日に閉幕した先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)で、G7首脳は、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くため、新興・途上国との連携を強化するとした首脳声明を発表した。
G7などの米欧と、中国・ロシアとの対立が進む中、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国を重視する姿勢を鮮明にした。
ルールに基づく自由で開かれた国際秩序を維持し、強化する方針を明記した。大小にかかわらず、あらゆる国の利益のため、国連憲章の尊重が必要だと強調した。
新興・途上国には、植民地支配や内戦の歴史を背景に欧米とは距離を置き、軍事、経済面で中ロと関係が深い国が多い。
国の数が多く、国際情勢を左右するだけに、G7側にはそれらの国を取り込み、影響力を及ぼしたい狙いがあるに違いない。
これに対し、新興国側はG7側が主導する国際秩序に必ずしも賛同してはいない。実利的な観点で一方の陣営に肩入れすることを避ける傾向もある。
日本はG7議長国として橋渡しする責務がある。かじ取りは容易ではないが、新たな国際秩序を目指した調整が求められる。
サミットに招待した20カ国・地域(G20)の議長国インドのモディ首相らと連携し、課題を探らねばならない。
鍵を握るのが中国との関係だ。
G7は今回、経済安全保障に関する声明を別途発表した。貿易を通じて相手国に圧力をかける経済的威圧に対抗する新しい枠組みを創設すると表明した。
中国を念頭に威圧行為をけん制するとともに、先端技術に欠かせないレアアースなどの高いシェアを握る中国への依存脱却を狙う。
G7以外と連携して「サプライチェーン(供給網)を強化していく」と示し、食料やエネルギーの輸出を「武器化」するような行為に反対すると記した。
一方、経済安保は「デカップリング(経済切り離し)ではなくデリスク(リスク回避)」に基づくと明記し、中国側に配慮した。
世界的な課題の解決に大国化した中国は欠かせず、声明は中国を害する意図がないとも強調した。
だが、中国はサミットに取り上げられたことに内政干渉だとして反発、ロシアとの関係強化でG7に対抗する構えを示す。
岸田文雄首相は22日、中国の習近平国家主席との首脳会談開催に意欲を示した。サミットでの討議を踏まえ「中国とは建設的、安定的な関係を双方の努力で築いていかなければならない」と述べた。
首相は中国との対話を通し、G7声明がうたった良好な関係を築くことに力を注ぐべきだ。
