民主主義を踏みにじる暴挙に及んだミャンマー国軍が、着々とその足場を固めつつある。暴力と独善が支配する異常事態の中で苦悩する国民の姿に歯がみする思いだ。

 強大な圧力の下で、軍政に抵抗する国民を支えなければならない。状況の打開へ日本を含む国際社会は粘り強く努力してもらいたい。

 ミャンマー国軍が、国家顧問兼外相だった民主派指導者アウンサンスーチー氏率いる政権をクーデターで転覆させてから1年が過ぎた。

 国軍がクーデターの理由に挙げたのは、2020年11月の総選挙だった。選挙ではスーチー氏の国民民主連盟(NLD)が圧勝したが、国軍は大規模な不正があったと主張した。

 だが、実態は国軍が影響力低下を恐れたからだとみられている。選挙で、国軍系政党が惨敗したからだ。

 クーデター以降、国軍はスーチー氏とNLDの力をそぎ、自らの権力基盤を固めることに躍起になってきた。

 スーチー氏は汚職や国家機密漏えいを含む17件の容疑で訴追され、これまでに禁錮刑6年の判決を受けた。スーチー氏は国軍によって軟禁され、NLD関係者500人近くも拘束・軟禁されている。

 民衆への弾圧もやまず、人権団体によると、既に1500人以上が犠牲になった。

 その一方で、国軍は親国軍政権の樹立へ準備を進める。国軍トップのミンアウンフライン総司令官は、来年夏までに行う次期総選挙で比例代表制導入の方針を表明した。国軍系政党の議席増が見込まれるという。

 しかし民主化を望む国民の思いは根強い。クーデターから1年となった1日、民主派は出勤や外出を控える「沈黙のスト」を実施。最大都市ヤンゴンは歩行者もわずかで、人々の強い反発が示された。

 一部の民主派は武装闘争に転じ、地方を中心として戦闘が起きている。

 暴力によって多くの命が奪われ、クーデター後の経済低迷で人々は苦境に陥っている。こうした状況に、何とか歯止めをかけられないものか。

 極めて残念なのは国際社会の足並みがそろわず、打開の決め手を欠いていることだ。

 国連安全保障理事会は中国やロシアの反対で、国軍への制裁など強い措置に踏み込めない。東南アジア諸国連合(ASEAN)は国軍への対応を巡り、加盟国の意見が割れている。

 日本は国軍との独自のパイプを強調してきたが、成果を上げられたわけではない。

 ただ、だからといって国際社会がアクションを起こさない状況が続けば、国軍支配の既成事実化が進むだけだ。

 必要なのは、窮状にあるミャンマー国民を孤立させず、手を差し伸べる姿勢をきちんと示すことだ。

 国際社会は態勢を立て直し、国軍にさらに圧力をかけるなど行動につなげてほしい。