教育現場での長時間労働が横行している。このままでは公教育の質が低下し、子どもたちへの影響が生じる懸念がある。教員一人一人の業務負担を減らす抜本的な改善を急がねばならない。
文部科学省は2022年度の教員勤務実態調査結果を公表した。残業時間上限の月45時間を超えることになる学校内勤務時間「週50時間以上」の教諭は小学校で64・5%、中学校77・1%だった。
過労死ラインとされる月80時間超の残業に相当する「週60時間以上」は小学校で14・2%、中学校で36・6%を占めた。16年度の前回調査より改善したとはいえ、長時間労働が常態化している。
授業以外にも、登下校の見守りや保護者への対応、部活動の指導といった幅広い業務をこなさねばならないことが大きい。デジタル教科書の導入により、新たな仕事も増えている。
働き方改革に伴う校長ら管理職からの帰宅圧力が、自宅への持ち帰り仕事につながっているとし、「闇残業が横行している」と指摘する教員もいる。
これでは残業時間が減っても、多忙感は消えない。
公立学校の勤務実態で「定額働かせ放題の元凶」と批判されるのが、残業代を支払わない代わりに、給与月額の4%相当の「教職調整額」を支給すると定めた教職員給与特別措置法(給特法)だ。
1966年度の調査で小中学校の教員約6万人の平均残業時間が月8時間程度だったことが4%の根拠で、72年に施行された。
給特法が現状に合っていないことは明らかだ。教員からは廃止を求める声も出ている。
永岡桂子文科相が、教員の待遇見直しを中央教育審議会に諮ったことは当然で、むしろ遅すぎたと言えよう。
中教審は来春をめどに方向性を示す。賃金面だけでなく、業務を軽減し、多忙な職場環境を改善できるよう導かねばならない。
業務支援スタッフや部活動指導員の増員で外部人材の登用などが想定される。各教育委員会は、できることから進めてほしい。
教育現場は多忙な「ブラック職場」とのイメージが広がり、教員志望者の減少につながっている。
文科省の調査では、2021年度に全国で実施された公立小教員採用試験の競争率は2・5倍で、4年連続で過去最低となった。
大学教授や元教員らのグループのアンケートでは、4月の新学期時点で小中とも20%以上で教員が足りず、昨年より悪化した。
担任が確保できなかったり、別室登校の児童への対応が手薄になったりし、教育環境が脅かされる事態になっているという。
子どもたちにしわ寄せが及ぶことがあってはならない。そのためには、体制を速やかに整備することが欠かせない。
