新型コロナウイルスは流行「第6波」による感染がこれまでにない速度で広がり、対策が矢継ぎ早に見直されている。
医療提供体制を維持し、社会経済活動を続けるための苦肉の策とはいえ、相次ぐ対策変更に不安や危機感を募らせる人は少なくないだろう。
1日当たりの国内感染者数は10万人を超えて急増している。政府や自治体は状況を十分に見極めて適切な対策を講じるとともに、分かりやすい丁寧な情報発信に努めてほしい。
政府は第5波の病床逼迫(ひっぱく)の反省から病床確保強化を対策の中心に据えてきた。
第6波では感染力が強い変異株のオミクロン株が急拡大し、外来診療が主戦場になっている。入り口となる発熱外来には患者が殺到し、パンクしかねない状況に追い込まれた。
これを受け、政府は発熱の症状があれば医療機関を受診してPCR検査を受けるとしていた手順を、検査を省いても医師の判断で陽性とみなすことができるように改めた。
感染者の濃厚接触者となった同居家族はこの「みなし陽性」の対象となる。運用判断は自治体に任せられ、既に本県や新潟市で導入されている。
第6波による全国の自宅療養者は2日時点で43万5千人に迫り、既に第5波のピーク時の3倍以上に膨らんでいる。こうした中で家庭内の濃厚接触者も急増している。
「検査、受診が原則」としていた政府方針からの大きな転換といえる。
ただ自治体側からは、医師の検査なしに臨床診断で必要な治療につなげられるか分からないと懸念する声や、感染者ではない人が陽性と診断される可能性を指摘する意見がある。
政府が対策の切り札とする飲み薬は発症から5日以内の投与が必要とされるが、こうした中で臨床診断を基に処方していいのか曖昧だとする医師もいる。
感染者の急拡大を踏まえたものとはいえ、現場には方針変更による困惑がある。混乱を招かないよう目配りときめ細かな対応が不可欠だ。
県内では濃厚接触者が検査を受けられず、そうではない人が受けられるといった実質的な矛盾も生じている。
県は濃厚接触者について、同居家族以外の友人や同僚は、原則検査をせずに自宅で待機するとしている。
その一方で、感染可能性は低いが不安を感じる無症状者は、民間薬局などに県が設置した無料検査所での検査ができる。
待機を求められる濃厚接触者の不安を放置することがないようにしてほしい。
第6波は感染収束が見通せず、政府は本県を含む地域のまん延防止等重点措置の延長を検討している。
感染者数はワクチンの追加接種の効果が見込まれる2月下旬以降に減るとの見方もあるが、より感染力が強いオミクロン株も見つかっている。楽観視せず感染防止対策を徹底したい。
