原油相場の動向は、天然資源に乏しい日本の経済に大きく影響する。電気料金やガソリン価格の上昇につながらないか、注視していかねばならない。

 主要産油国でつくる石油輸出国機構(OPEC)プラスは、協調減産の枠組みを2024年末まで1年間延長することで合意した。

 協調減産を通じた24年1月から同年末までの生産量の合計を日量4046万バレルに設定した。

 現在の日量200万バレル減産を決めた昨年10月の合意内容より、日量140万バレル程度減る。

 OPEC最大の産油国サウジアラビアとロシアなどは既に実施している自主減産をそれぞれ24年末まで続ける。サウジはさらに今年7月に追加で自主減産する。

 これにより7月の減産規模は世界需要の5%弱に当たる日量466万バレルとなる。

 世界経済は金融不安などを背景に不透明感が拭えず、原油相場は下落基調にある。

 これに不満を抱くサウジが主導し、相場の中長期的な底上げを狙った。同じ輸出量なら相場の下落は収入減少を意味するからだ。

 だが、相場が上がれば原油消費国のインフレ懸念を再燃させ、原油の需要に関わる景気そのものが後退しかねない。

 原油や石油製品の輸出が国家財政の柱となっている産油国は、そうしたリスクを覚悟の上で相場の底上げを優先したといえる。

 一方、生産量が世界3位のロシアはさらなる減産には慎重だ。

 昨年は相場上昇を利して侵攻の戦費を調達してきたが、12月に日米欧などがロシア産原油に上限価格を設定する制裁を発動した。

 このためロシアには原油価格を低く抑え、輸出を増やして収入を補いたいとの思惑が透ける。

 国際エネルギー機関(IEA)によると、ロシア産原油と石油製品の輸出量は4月に侵攻後で最多となった。IEAはOPECプラスで昨年約束した減産を完全に実行していないと分析する。

 サウジが追加の自主減産に踏み切ったのは、減産に慎重なロシアに配慮しつつ産油国の結束を維持するためだろう。

 市場には、原油需要は伸び悩むが、減産延長で供給不足感が続き相場は上がるとの見方がある。

 政府はガソリン価格抑制のための補助金を今月から段階的に縮小し、9月末で終了する方針だ。

 相場次第では店頭価格は徐々に上昇し、車が欠かせない地方にとって大きな打撃が見込まれる。

 燃油を使う農業や漁業などのコスト増にもつながる。幅広い素材に使われる原油価格の上昇は景気全体の足も引っ張りかねない。

 日本の輸入原油の約9割は中東産が占める。政府は再生可能エネルギーの普及を急ぐとともに、各国と連携して産油国に市場の安定化を働きかけてもらいたい。