外国人を適切に保護する法改正と言うには遠く、懸念が残る。課題を置き去りにせず、今後も見直しを続けることが不可欠だ。
難民申請中の強制送還停止を原則2回に制限する改正入管難民法が9日、成立した。
不法滞在などで強制退去を命じられても拒否する人への対応を強化し、3回目の申請以降は「難民認定すべき相当の理由」を示さなければ送還する。
入管当局は、送還を逃れる意図で申請を繰り返すケースが多いとみているが、申請回数の制限には、本国で迫害の恐れがある人を帰してしまうとの批判が強い。
申請を却下された外国人は「命が危ないから助けを求めているのに、日本政府は自分たちを犯罪者扱いしている」と憤る。
こうした訴えを過小評価していないか。生命や自由が脅威にさらされる国へ難民を送り返してはならないと定める難民条約の原則にも反する恐れがある。
難民認定を巡っては、参院の審議で、2次審査に関わる難民審査参与員の業務が、一部の人に偏っている実態が判明した。
参与員は有識者111人が選任されているが、2021年と22年に1人で計2609件を担当した人がいた。2次審査全体の2割以上に当たる件数だ。
入管庁は、明らかに難民に該当しないと判断できるものを配分したためと弁明したが、審査制度の在り方に疑問符が付く。
気になるのは、「申請者の中に難民がほとんどいない」と述べたこの参与員の発言を、入管庁が改正法案を解説する資料に引用したことだ。年に千件も審査したのでは熟慮されたかも疑わしい。
審議では、大阪出入国在留管理局の医師が酒に酔った状態で診療していた疑いも浮上した。由々しき事態と言わざるを得ない。
法改正では、収容の長期化を防ぐために「監理措置」を新設し、支援者ら監理人の下での社会生活を認め、収容中も3カ月ごとに必要性を見直すとした。
ただ、監理措置の適用は入管庁の裁量に任され、監理人が見つからなければ収容される。
監理人は不法就労などの違法行為を入管庁に報告しないと過料に処されるため、請け負ってもらうことは容易ではないだろう。
一方、紛争地域の住民らを難民に準じる「補完的保護対象者」として在留を許可することは、ウクライナをはじめ紛争地域の避難民を受け入れる基盤となる。
改正法には国際社会から厳しい目が向けられていることを忘れてはならない。国連の特別報告者は「国際人権基準を下回る」として見直しを求めていた。この内容では信頼を得ることは困難だ。
問題は、改正法が成立して終わりではない。適切な運用がなされるか確認が欠かせない。
