国の根幹に関わる重要政策で課題が山積したまま、国会は最終盤に入ったが、解散風にあおられ、与野党の駆け引きばかりが際立っている。しっかりと国民本位の議論を尽くすべきだ。
国会は21日の会期末まで1週間を切った。
与野党の攻防は、改正入管難民法やLGBT法案を巡って激化し、今国会の要となる防衛費増額の財源を確保する特別措置法案の扱いで先鋭化している。
自民党は会期内成立に全力を挙げる意向で、15日の参院財政金融委員会、16日の参院本会議での可決、成立を想定している。
一方、立憲民主党は反対し、内閣不信任決議案を提出することも検討している。
防衛財源法案について政府は、巨額の防衛費を捻出するための増税の実施時期を法案に盛り込まず、増額に充てる歳出改革の具体的な中身も示していない。
安全保障上の大きな問題を含んでおり、国会での十分な議論が求められる。
少子化対策では、政府は「こども未来戦略方針」を13日に決定し、岸田文雄首相が記者会見で、来年10月分から児童手当を拡充することなどを発表した。
首相は「国民の追加負担ゼロ」を強調したものの、財源は徹底した歳出改革で確保するなどと述べるにとどまり、ここでも具体的には触れなかった。
どの分野の歳出を削減するのか示さなくては、国民の暮らしにどう影響するのか分からず、方針の是非を判断できない。
首相が負担増のイメージを隠すのは、早期の衆院解散・総選挙が念頭にあるとの見方がある。
13日の会見では衆院解散について「いつが適切か、諸般の情勢を総合して判断していく。情勢をよく見極めたい」とし、これまで繰り返していた「今は考えていない」から言い方を変えた。
野党は「首相自ら解散風を吹かせていると見られても仕方がない」と批判している。
気になるのは、不信任案が提出されれば、首相が衆院を解散する「大義」になると、自民党幹部が相次いで発言していることだ。
これでは、議員が浮き足立ち、落ち着いた議論が望めない。
憲法69条は、不信任案が可決された内閣は衆院を解散するか総辞職するよう定める。不信任案の提出に対する解散は規定になく、提出を理由にした解散権行使は乱用だとの指摘もある。
共同通信社が5月下旬に行った世論調査では、今国会会期末までの衆院解散を「するべきではない」が60%を超え、早期の衆院選に否定的な回答が多かった。
党利党略を優先して解散を急いではならない。国会は国民に大きな影響を与える問題の審議に真摯(しんし)に向き合うべきだ。
