国交樹立以来、最悪とまで言われる米中両国関係の改善へつなげなくてはならない。修復への道のりは険しいが、粘り強く対話を重ねてほしい。

 ブリンケン米国務長官が訪中し、習近平国家主席らと会談した。米国務長官の訪中は5年ぶりで、2021年のバイデン政権発足後の閣僚訪中は初めてだ。

 米中関係の悪化に歯止めをかけ、偶発的衝突の回避に向けた対話を確保する狙いがある。

 会談では習氏が「世界は安定した中米関係を必要としている」と述べ、緊張緩和に意欲を示した。「二大国は平和的共存の道を探し出せる」と強調、米国に挑戦する意図はないと主張した。

 ブリンケン氏も米中関係を改善させる意向を表明し、中国高官との対話継続の方針で一致した。

 米中両国が対話へと重い腰を上げたのは、これ以上の緊張激化は利益にならないとの認識があるからだろう。中国は国内の経済不安が高まっており、外交得点を稼いで不満をかわす狙いもある。

 融和の機運を確実なものにしたい。しかし、両国は台湾を巡って激しくせめぎ合っている。楽観はできない。

 中国は台湾問題を「核心的利益の核心」として武力統一を排除しない姿勢を貫き、「米国の内政干渉だ」としている。

 米国は台湾海峡の平和と安定が重要だとし、力による一方的な現状変更に強く反対している。

 台湾海峡や南シナ海では、米中の軍艦や軍用機が異常接近する事案が発生している。偶発的な軍事衝突の回避に向けて、途絶えた状態になっている国防当局間のハイレベル対話の確保が急がれる。

 会談ではブリンケン氏が軍同士の対話再開を要求したが、中国が軍高官への米側の制裁を理由に拒否し、進展は見られなかった。

 台湾問題以外にも、両国の利害は絡み合っている。

 2月に予定されたブリンケン氏の訪中を延期する要因になった偵察気球問題は解決しておらず、香港民主化運動やウイグル族への人権問題でも対立している。経済面では米国が昨年10月に、半導体や製造装置の輸出規制を強化した。

 ただ、ブリンケン氏と秦剛国務委員兼外相の会談が約7時間半に及んだことは、信頼関係を築く一歩となるだろう。

 バイデン米大統領は米中関係は「正しい道筋にある」と述べ、国務長官訪中で一定の関係改善が図られたとの認識を示した。

 両政府は年内開催も視野に、首脳会談を調整するという。抱える火種は多いが、あらゆるチャンネルで今後も対話を継続し、歩み寄るべきところは歩み寄るべきだ。

 米中両国は、ロシアのウクライナ侵攻で分断が深まる国際秩序の再構築へ向けて、大国の役割を果たさねばならない。