マイナンバーを巡るトラブルが後を絶たない。高まる国民の不安を絶対に解消しなければならない。総点検で課題を洗い出すことは当然である。

 マイナカードと健康保険証を一体化したマイナ保険証についても当初計画の日程ありきで導入するのではなく、柔軟に対応する姿勢を求めたい。

 政府はマイナンバーに関する省庁横断の情報総点検本部を設けた。他人情報のひも付けが判明したマイナ保険証をはじめ、ほかにもデータに誤りがないか今秋までに拾い出す。

 マイナカード取得者向けサイト「マイナポータル」で閲覧できる全29項目が対象となる。

 他人情報のひも付けは、保険証のほか年金や障害者手帳でも明らかになった。点検はこれら以外の児童手当や生活保護、雇用保険、教育・就学支援も含まれる。

 課題をチェックし、改善することが不可欠だ。どんなシステムでも、ミスは起こり得るという前提に立って調べるべきだ。

 政府は2024年秋に健康保険証を廃止してマイナ保険証に一本化する方針を示している。

 だが、これまでに別人の医療情報をひも付けるミスが相次いだほか、「無保険扱い」となった患者に医療費10割が請求されるケースも発生し、マイナ保険証に対する国民の不安は特に強い。

 共同通信の世論調査では、延期や撤回を求める声が72%に上り、60代以上では78%を超えた。

 岸田文雄首相は、24年秋の廃止後も経過措置として最長1年間は現行保険証を使えるとした上で「25年秋までの期間を活用し、不安を払拭していく」と述べた。

 政府は国民の不安払拭を前提に、現行保険証を全面廃止する考えだが、期限を区切らずに現行保険証との併用を可能にすることなども検討すべきだ。

 デジタル分野を苦手とする高齢者や障害者らも安心して医療サービスを受けられるようにしなければならない。

 トラブルが拡大した要因について、政府内ではデジタル庁が司令塔として機能していないとの見方がある。改めて組織の在り方を考え、課題解決へ力を発揮できるようにする必要があろう。

 自治体の点検は総務省が後押しするが、新型コロナウイルスのワクチン接種では、幹部が各地の首長に電話して急がせ、「圧力だ」と反発を招いた。今回も対応次第であつれきを招きかねない。

 上意下達ではなく、丁寧な説明を重ねていく姿勢が大事だ。

 閉会した通常国会では議論が深まらなかった。自民党と立憲民主党が、マイナ問題に関する閉会中審査を開くことで合意した。

 国会は、国民の目線に立った議論を重ね、信頼できるシステムにしていく責務がある。