梅雨本番を迎え、県内はぐずついた空模様が続く。大雨が降りやすくなる梅雨後半に向けて、万全の備えが欠かせない。

 今月は発達した雨雲が次々と連なる「線状降水帯」が全国で相次いで発生し、被害が出た。急な豪雨でも慌てず行動できるように、あらかじめ避難経路や情報収集の手段を確認しておきたい。

 鹿児島県の奄美地方では梅雨前線に湿った空気が流れ込んだ影響で19、20日と線状降水帯が発生し、土砂崩れで集落の住民が数日間、孤立する事態が起きた。

 2日ごろには台風の影響で、西日本や東日本の広い範囲で線状降水帯ができ、この時季としては異例の豪雨となった。土砂崩れなどで亡くなった人もいた。

 こうした大雨は条件によってどこでも降る可能性がある。私たち県民も注意したい。

 近年多発している豪雨災害を教訓に、避難や注意を呼びかける情報は変わってきている。

 気象庁は5月から、線状降水帯の発生を伝える「顕著な大雨に関する気象情報」を、従来より最大30分早く発表するようにした。

 以前は、前3時間積算降水量の最大値が150ミリ以上のエリアを含むといった基準を満たしてから速報していたが、基準に達する前でも、予測を組み合わせて運用する方法に改めた。

 昨年6月からは「半日前予測」も始まっている。

 大事なのは、これらの情報を迅速で確実な避難に生かすことだ。

 大雨や洪水で道路が冠水すると、足元が見えなくなる。水の流れに足を取られることもあり、安全に避難できなくなる。

 そうなる前に、高齢者や要支援者が移動を終えられるように、自治体や関係者は情報を積極活用してもらいたい。

 ただ、線状降水帯は予測が難しいという点に注意が要る。

 昨年8月の県北豪雨のように、発生を予測できずに甚大な被害につながる恐れがある。

 情報が発表された時には、既に洪水や土砂災害が起きているといったケースも考えられる。

 住民は自治体の指示を待つだけでなく、自ら情報を集め、避難を判断する必要もあるだろう。

 例えば、気象庁のウェブサイト「キキクル」は、土砂災害と浸水、洪水の危険度を、地図上で色分けして示す。

 自分が暮らす地域の状況を小まめに確認し、危険性を把握することは避難の判断で役に立つ。

 デジタル機器が苦手な高齢者らが情報を得られず、取り残されることがないように、周囲に目配りし、避難を促すことも重要だ。

 下流域では雨が降っていなくても、上流に大雨が降ると時間差で洪水が起きることがある。

 テレビやラジオも活用し、身近な河川の情報を入手したい。