離島航路は地元にとって命綱であり、その安定は観光などを通した地域振興にも不可欠だ。

 これまで地方公共交通機関の再生に取り組んできたノウハウを生かして佐渡汽船の経営再建を図り、安心できる航路運営に努めてほしい。

 債務超過に陥っている佐渡汽船が、東京に本社がある公共交通運営会社「みちのりホールディングス(HD)」から最大15億円の出資を受け、子会社化されることになった。

 みちのりHDのほか、第四北越銀行を引受先とする第三者割当増資で最大30億円の資金を調達し、経営再建を目指す。

 みちのりHDは議決権の約66%の株式を有し、現在筆頭株主の県は約10%、佐渡市は約3%となる見通しだ。

 佐渡汽船は新型コロナウイルスの流行による観光客減少などで経営が悪化し、負債が資産を上回る債務超過に陥った。2021年12月期決算で3期連続の最終赤字、債務超過額は約30億円に膨らむ見込みだ。

 佐渡汽船は金融機関や県などの自治体に支援を求め、収益改善に取り組んできたが、抜本的な改善に至っていないとして自力再生を断念した。

 地域にとって重要な交通機関の経営がここまで追い込まれたことは残念というしかない。長く続くウイルス禍の厳しさを改めて実感する。

 みちのりHDは、経営不振に陥った地方のバス会社を傘下に収め、再建してきた実績を持つ。注目したいのは、そこで培った再生力だ。

 佐渡汽船の航路は、島民の生活にとって欠くことができないものだ。島外との日常的な交流の手段であり、観光を中心とした産業の土台でもある。

 みちのりHDは佐渡汽船の子会社化後の運航については、ダイヤ編成や運賃水準を当面維持する方針だ。

 ただ、採算が厳しい小木-直江津航路を維持するには赤字補塡(ほてん)の公的な補助が必要との認識を示す。

 経営改革に当たってはリストラは予定していないという。

 離島航路を運営する責任の重さを自覚し、将来にわたり航路の確保に尽力してほしい。

 佐渡は人口減や高齢化が著しい。世界文化遺産登録を目指している「佐渡島(さど)の金山」をはじめ、食や自然、文化といった観光資源は豊富だが、十分生かせていない面もある。

 みちのりHDは、グループ内の交通事業者の既存インフラを結び、人やモノの流れを生む広域的な地域連携の仕組みづくりを目指しているという。佐渡を核とした本県の交流人口増加や物流の促進などに期待したい。

 みちのりHD、佐渡汽船の両社は今後、県、佐渡、上越両市と航路維持に向けた連携協定を締結する予定だ。

 県の出資比率が下がることで関与が弱まるとし、航路体制を不安視する声もある。それを払拭(ふっしょく)し、県が適切に関与していくためにも、協定の内容をきちんと詰めてほしい。