東京電力に原発の運転を任せられる資質は備わっているか、改めて問われることになった。
地元自治体が再稼働の是非を判断する上で重要な評価の一つとなる。東電は定めたルールを自らきちんと守っているか、規制当局は厳格に検査すべきだ。
東電柏崎刈羽原発でテロ対策上の重大な不備が相次いだ問題で、原子力規制委員会は東電に原発を運転する「適格性」があるかどうかを再評価する方針を決めた。
3カ月ほどかけて、原発の安全管理ルールを定めた保安規定に盛り込んだ「七つの約束」の取り組み実績を再評価する。
7項目は「いかなる経済的要因があっても安全性の確保を前提とする」「規制基準の順守にとどまらず、自主的に発電所の安全性を向上する」などで、会社としての決意に相当する。
原発の運転に絶対欠かせない覚悟や姿勢を東電自らが示した。規制委は2017年、再稼働を目指す6、7号機の審査時に、この決意を保安規定に入れることを条件に適格性を認めた経緯がある。
再評価では書類確認や意見聴取などを実施し、経営層との面談や現地調査も検討する。地元の疑念に応えられるよう、丁寧かつ徹底的な評価作業を求めたい。
地元自治体からは東電の適格性を疑う声が相次いでいる。核物質防護体制の不備、侵入検知設備の故障、書類の無断持ち出しなどの不祥事が収まらないからだ。
花角英世知事は21年、東電は的確に原発を運転する技術的能力があるか、規制委に再評価するよう求めていた。先月の会見では「技術的能力があるのか、まさに疑問を感じる状態」と述べた。
柏崎市の桜井雅浩市長は議会答弁で「ゲームセットに近い」と述べ、東電への信頼が喪失する寸前だと示唆した。長岡市の磯田達伸市長も会見で国に対し「東電ではない発電の体制や仕組みを考えた方がいい」と求めた。
ただ、規制委の山中伸介委員長は今回、再評価を行う理由は地元の不信感とは関係がないとの認識を示している。
17年当時の判断を維持できるか再評価する目的だからだろうが、問題点を探し出そうとする積極性が欠けているように映る。
テロ対策上の不備など17年以降に発覚した問題を考慮すれば、適格性を認めた規制委の姿勢には疑問符がつく。規制の在り方にも目が向けられると自覚してほしい。
一方、東電は7号機を今年10月に、6号機を25年4月に再稼働する前提で電気料金の値上げ幅を算定していたが、10月の再稼働はより困難な状況になった。
東電は自ら掲げた七つの約束に即して「安全を最優先した経営上の判断」をしなければならない。それには再稼働と電気料金低減を切り離した議論が欠かせない。