蒸し暑い日が続くが、梅雨が明ければ夏本番を迎える。猛暑による熱中症では、命を落とすケースもある。万全の備えをしていかなければならない。
熱中症は、暑さによって体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温調整ができなくなったりして起きる。めまいや吐き気、だるさなどの症状が出る。重症化し、死に至る場合もある。
例年7月下旬から8月上旬にかけて患者が多くなる傾向がある。
今年は、県内28観測地点のうち6地点で今月7日に初めて最高気温35度以上の猛暑日となった。10日には気象庁などが、本県などを対象に今年初の熱中症警戒アラートを発表した。
アラートは気温、湿度などから算出する「暑さ指数」を基に、熱中症の危険性が高まった場合に出され、昨年は25回に上った。
今夏も一人一人がアラートを参考に注意したい。発表されたら炎天下の活動は避ける必要がある。
とりわけ気をつけたいのは高齢者だ。汗をかいて体温を下げる機能が弱まるほか、喉のかわきを自覚しにくくなり、脱水症状を起こしやすくなる。
高齢者に多く、屋内でもなりやすい熱中症を防ぐには、規則正しい食事と十分な睡眠が大事だ。就寝前や寝起き、入浴前後などに小まめな水分補給も欠かせない。
冷房で室内の温度や湿度を下げることも重要だ。値上がりした電気料金を節約しようと、無理な節電は避けたい。県内でも冷房が効いた公共施設を開放する自治体がある。こうした取り組みを利用するのも効果的だ。
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類へ移行したことに伴い、マスクのルールは大きく緩和された。暑さなど状況に応じて、適切な着脱を心がけたい。
政府は、熱中症の対策を強化する「熱中症対策実行計画」を5月に閣議決定した。近年の平均年間死者数1295人を基準に2030年までに半減させる目標を掲げ、今夏から対策を強化する。
熱中症予防に向けた啓発や、福祉関連団体などを通じた高齢者らの見守り強化、学校やスポーツ施設へのエアコン設置支援などだ。
また、4月に成立した改正気候変動適応法で初めて熱中症対策を法律に位置付けた。
柱は24年以降、警戒アラートの一段上に特別警戒アラートの新設だ。「10年に1度」などの極端な高温の際に冷房を備えた施設への避難などを促す仕組みを目指す。政府や自治体には、しっかりと準備を進めてもらいたい。
