水素は2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラル(CN)を達成する上で鍵を握るエネルギーだ。CN実現を表明した本県も、製造や供給の拠点化を進めたい。

 政府は、6年ぶりに水素基本戦略を改定した。15年間で官民合わせて15兆円を投資し、40年の水素供給量を現状の6倍の1200万トン程度とする目標を掲げた。

 効率的な水素供給網構築のため、今後10年間で、国内に拠点を複数整備する方向性も示している。大都市圏を中心に大規模拠点を3カ所程度、中規模拠点を5カ所程度整備する方針だ。

 水素は燃焼時に二酸化炭素(CO2)を出さない次世代燃料として期待される。火力発電や燃料電池車(FCV)の燃料としての活用が想定される。

 再生可能エネルギーを使って、水電解装置で水を電気分解することで、日本のような資源に乏しい国でも水素の製造が可能だ。

 水素の利活用は、再生エネの導入拡大につながることも認識しておきたい。

 電力は需要量と供給量が一致していないと停電を招きかねない。太陽光発電などは発電量が需要を上回ると予想されれば出力制御が行われるが、余剰電力を水素の製造に使うことで有効利用できる。

 水素の形で貯蔵し、必要な時にエネルギーとして使う調整力の役割が期待できる。

 主要国は水素産業の育成に巨額の投資をしている。海外市場との関わりも重要だ。22年には、日豪間で世界初の専用船による液化水素の国際間輸送に成功した。

 水素需要が伸びれば、海外で製造した水素を日本国内で活用する場面も出てくるだろう。関係国との連携を深めながら、多様なエネルギーの確保を図りたい。

 現状では高いといわれるコストの低減に向けては、大規模な需要を作り出すことが必要だ。

 発電分野での利用は有効だろう。21年に閣議決定した第6次エネルギー基本計画では、30年の電源構成で、水素などで1%程度を賄うことが初めて明記された。

 火力発電での水素活用は、CO2排出量の削減と同時に、水素の需要創出につながる。

 県の「新潟カーボンニュートラル拠点開発・基盤整備戦略」によると、秋田から京都までの日本海側の府県で、今後長期運転が見込まれる火力発電所の約7割が、本県に立地する。長期的に大量の燃料需要の発生が考えられる。

 本県では30年時点で最大20万トン超の水素製造が見込まれている。

 戦略は30年に向けて、天然ガスを使ってCO2排出量が実質ゼロのブルー水素を製造する設備や、水素供給網の整備を掲げる。

 本県はエネルギー・化学産業が集積する。官民が力を合わせて日本海側のCN拠点を実現したい。