攻撃的な姿勢で銅メダルをつかんだ。大けがを負った会場で、見事恐怖心をねじ伏せた。

 妹と技を競い合い、切磋琢磨(せっさたくま)してきたことも大きな力となったはずだ。快挙に心から拍手を送りたい。

 北京冬季五輪のスノーボード女子ハーフパイプで、妙高市出身の冨田せな選手が銅メダルに輝いた。

 この種目で日本のメダル獲得は初めてだ。県勢では今大会初めての表彰台となった。

 妹のるき選手も初出場で5位に入賞した。姉妹の活躍は、日本女子スノーボード界に新たな歴史を刻んだといえる。

 せな選手の集中力は見事だった。1回目に安定した技を見せると、2回目は90点に迫るハイスコアを獲得した。

 高い位置からの鮮やかな横3回転、板の先端をつかむテールグラブも入れるなど、難度の高い技を披露した。

 「まさかここまで来られるとは。夢みたいでうれしい」と会心の出来を振り返った。

 前回平昌大会の8位から大きく躍進した。だがここまでの道のりは平たんではなかった。

 今大会の会場で行われた2019年12月のワールドカップの練習中に転倒、脳挫傷を負い、競技ができない時期があった。

 本番前の公式練習では「何回も思い出して、最初は泣きながら滑っていた」と打ち明けた。予選でも不安がよぎり、納得のいかない内容だったという。

 決勝では気持ちを切り替え、五輪直前に初優勝したプロ最高峰の冬季Xゲームで見せた安定感を取り戻した。その精神力には感心させられる。

 妹のるき選手は、初の大舞台でも落ち着いて技を繰り出した。「楽しもう」という姿勢が好結果に表れたのではないか。

 姉妹は、仲間として、ライバルとして成長してきた。

 スノーボードが趣味の父親に連れられ、ともに3歳から板に乗った。負けず嫌いな性格は共通しているという。

 妙高には本格的なハーフパイプの設備はないが、スキー場にあるジャンプ台を使い、毎回同じ位置に着地する練習などを繰り返した。

 地元の応援も大きな支えとなったに違いない。

 2人がともにけがの影響で精神的にも追い詰められていた頃、知人らに温かく励まされた。夏場は地元の指導者からトレーニングのコーチを受けた。こうした環境が今季の好調を支えているのだろう。

 県勢は今大会、フリースタイルスキー女子モーグルで川村あんり選手(湯沢学園出)が初出場で5位に入った。

 五輪での県勢の活躍は本県のスキー、スノーボード界にとって大きな励みとなる。

 きょう11日に行われる男子ハーフパイプ決勝には、2大会連続銀で予選トップの平野歩夢と、初出場で同9位の弟海祝(かいしゅう)両選手が臨む。

 歩夢選手には県勢初の金メダルの期待がかかる。兄弟の躍進で新潟を沸かせてほしい。