効果的な学習が期待される一方、思考力などへの影響が懸念される。適切な活用法を見極め、どう利用していくのか。慎重に議論を深めていきたい。

 文部科学省が、対話型人工知能(AI)「チャットGPT」といった生成AIの小中高向け指針をまとめ、全国の教育委員会などに通知した。

 生成AIを使いこなす力を意識的に育てることを重要としつつ、さまざまな課題を検証する姿勢も重視している。

 多くの宿題が課される夏休みは、生成AIが不適切に使われる懸念があり、文科省は一定の方向性を出す必要があると判断した。

 今回は暫定版で、秋までに中高のモデル校を指定し、実践例を蓄積した上で、改定を重ねる。

 生成AIは、利用者の指示を受け、コンピューターがインターネットを通じて百科事典の知識や絵画、音楽など膨大なデータを学習する。文章作りや画像作り、アイデア出しが容易にできる。

 一方、生成AIの回答自体が間違っていたり、利用者が自分で考えなくなったりする恐れがある。

 そのため指針では、限定的な利用から始めるのが適切とし、特に小学生の利用には慎重な対応が必要だとした。批判的思考力や創造性への影響のほか、著作権侵害などのリスクも指摘している。

 具体的な使い方では、討論でのアイデアの参考にすることや、英会話の相手、プログラミング学習などには有効とした。

 また、「誤り」を教材にして生成AIの限界に気付かせる活動にも意義があると指摘した。

 定期テストで子どもに使わせると成績評価にふさわしくないと明示した。詩の創作などで安易に使うことには問題があるとした。

 読書感想文やコンクール応募作品で自分のものとしてそのまま使うのは不正行為だとしている。

 加速度的に技術が進む生成AIと社会がどう付き合うかは、現時点では割り切れていない。

 とりわけ子どもへの指導では、新技術を使いこなすことを重視するのか、深い思考の機会を確保するため距離を置くのか、教育効果の議論は始まったばかりだ。

 今後さらなる課題が出る可能性もあるが、一つ一つ考えたい。

 生成AI活用の是非を、学校現場でも話し合ってほしい。

 ただし、全ての教職員が新技術に精通しているわけではない。国や各教育委員会には、研修制度の構築など、現場のサポートに積極的に努めてもらいたい。

 学校外で子どもが生成AIを使う可能性を考慮し、情報の真偽確認や個人情報拡散を防ぐ意識を高める情報モラル教育を充実していくことも欠かせない。

 学校に任せきりにせず、家庭でも正しい使い方について考え、モラルを高める教育が大事だ。