国民の不安感に直結する犯罪が増え、体感治安の悪化につながる恐れがある。警察は対策を急ぎ、摘発を強化してもらいたい。
今年1~6月の上半期に全国の警察が認知した刑法犯は、前年同期と比べ21・1%増の33万3003件だったことが警察庁のまとめ(暫定値)で分かった。
21年ぶりに増加に転じた。通年で20年ぶりに増えた2022年の傾向がとまらない状況だ。
本県でも増加に転じ、20・4%増の3997件だった。通年でみると、昨年まで20年続けて減ったが、今年は増える可能性がある。
全国では、新型コロナウイルス感染拡大前の19年上半期と比べ、刑法犯全体は減ったが、殺人や強盗、放火、強制性交(不同意性交)などの重要犯罪は増えた。
自転車盗や路上での傷害、暴行などの「街頭犯罪」と、侵入強盗や侵入盗などの「侵入犯罪」がそれぞれ3割近く増えた。身近な場所での犯罪が目立っている。
感染対策が進み、行動制限の緩和による「反動」が要因とみられる。経済活動や人の流れが平常に戻りつつある中、警察当局は体感治安の悪化を警戒すべきだろう。
注意したいのは、交流サイト(SNS)上で「闇バイト」に応募した若者らに強盗や窃盗をさせる新たな手口の犯罪だ。
「ルフィ」らを名乗る指示役による広域強盗事件で注目された。1月には東京都内で住人の女性が暴行されて死亡する強盗致死事件が発生した。
アルバイト感覚で犯罪に手を染める実態が明らかになり、社会に不安が広がっている。警察をはじめ関係機関は増える刑法犯に危機感を持たねばならない。
警察庁は今月、SNSなどでつながり、特殊詐欺や闇バイトなどの犯罪に関わる集団を「匿名・流動型犯罪グループ」と新たに規定、全国の警察に実態解明や摘発を強化するよう指示した。
全国で起きる特殊詐欺に効率的に対応するため、47都道府県警から集められた捜査員が、犯行グループの活動拠点が集まる首都圏で集中捜査する専門部隊を拡充し、新組織として来春発足させる。
事件捜査は「発生地主義」が原則だが、新組織は地方の警察本部から捜査嘱託を受けると、初動から容疑者割り出し、内偵など摘発までの捜査の中枢部分に関わる。
捜査員の首都圏出張などの手間を減らし、専門的な捜査力を生かすことでスピード感のある捜査や摘発を期待したい。
都道府県警の枠を超え、警察組織の部門の縦割りを排することにも効果があるだろう。
特殊詐欺の被害総額は03~22年で6千億円を突破した。新潟、長岡両市の一般会計当初予算を足した額を上回る。国民の貴重な財産を守るため、全国の警察が英知を結集することが求められる。
