信じられない不正が日常的に行われていたことに驚くばかりだ。国や第三者機関は厳しく調べ、不正行為を徹底的に解明しなくてはならない。

 中古車販売大手ビッグモーター(東京)が、全国の修理工場で事故車両の修理代を水増しして、自動車保険の保険金を不正に請求していたことが判明した。5年以上前から行っていた可能性が高い。

 靴下にゴルフボールを入れて振り回したり、工具のドライバーでひっかいたりして車体を故意に傷付けた。不必要な部品交換をするなど手口はいずれも悪質だ。

 売り上げの架空計上など粉飾に当たる会計処理もあった。工場長の指示によるとの証言があり、組織ぐるみで行われていた。

 不正は昨年3月、損保業界の関連団体への内部告発で発覚し、損保各社が実態調査を要請した。ビッグモーターが設置した外部弁護士による特別調査委員会が今月、報告書で不正を認定した。

 報告書によると、経営陣が工場に修理による収益として、1台当たり14万円前後のノルマを課し、不合理な目標達成を迫っていた。目標未達の理由を問い詰められるのに耐えかねた工場を中心に不正行為が始まった。

 工場が増えた一方で、作業は未経験者や日本語の会話能力が乏しい外国人が十分な指導を受けずに担っていたことも判明した。

 2022年までの3年間には、工場長延べ約50人が相次いで降格処分になったが、弁解の機会も与えられず、処分理由も明らかにされなかったという。

 会社法上の要件を満たす取締役会が開かれたことはなく、法令順守の担当役員も定められていなかった。黙って経営陣に従うことを余儀なくさせる企業風土があったと報告書は指摘している。経営陣の責任は極めて重い。

 新潟市内の工場でも少なくとも35件の不正請求が疑われている。

 保険の不正請求で影響を被った顧客もいる。必要のない保険を使って等級が下がり、保険料が割高になった可能性がある。

 保険会社は本来の等級に戻す手続きを進め、ビッグモーターに過払い分の返還を請求する方針だ。速やかに作業してほしい。

 損害保険ジャパンなど保険大手3社は不正が行われていた期間にビッグモーターへ出向者を出しており、それぞれ契約者が事故にあった際に優良な修理工場として紹介していた。

 金融庁は、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の契約手続きを担っている同社の保険代理店としての業務実態を調査している。大手3社の責任の有無もしっかり調べる必要があるだろう。

 第三者機関による車両修理の全件調査も行われる。

 ビッグモーターは全容を明らかにすることから始めるべきだ。