紛らわしい表記が誤りを誘発したようだ。米軍の内部情報を含むメールが、長年にわたって西アフリカのマリに誤送信されていた。米軍メールアドレスの、ネット上の住所に当たる「ドメイン」の末尾「mil」がマリの「ml」に似ており、入力ミスが原因らしい
▼マリの暫定政権はロシアと関係が近いとされる。誤送信されたメールは数百万通に上り、中には軍高官の外国訪問の旅程や宿泊先の部屋番号が記されたものもあった。テロなどに利用される可能性もあったと思うと、あぜんとする
▼現代は紛らわしいものがあふれている。新型ウイルス感染症は夏風邪と症状が似ている。一般人には見分けるのが難しいこともあるという。夏風邪の中でも、子どもがかかりやすいヘルパンギーナが流行しており、県は今月、4年ぶりに警報を出した
▼紛らわしさが悪質なのは詐欺の類いだ。本物と偽物の見分けがつかないような仕掛けを施して、金をだまし取る。2002年ごろに現れた「おれおれ詐欺」を発端とする特殊詐欺は一向に減る気配がない。年間の数字が残る03~22年の被害総額は6千億円を突破した
▼辞書を眺めていたら「魯魚章草(ろぎょしょうそう)」という四字熟語に出合った。「魯」と「魚」、「章」と「草」がそれぞれ紛らわしいことから、文字を書き誤るという意味だ。確かに、慌てていると取り違えるかもしれない
▼人間は間違える生き物だ。まずは一呼吸。信頼できる誰かに相談してみてもいい。紛らわしさのわなに落ちたくはない。