財政危機が表面化した当初から想定されていたとはいえ、本県には経験のない事態である。抜け出すには長期間かかる見通しで、県民への丁寧な説明が欠かせない。
県は、本県が借金を意味する県債を発行する際に、国の許可を必要とする「起債許可団体」に移行したと明らかにした。
28日発表の2022年度一般会計決算に基づく算定で実質公債費比率が18・2%となったためだ。
実質公債費比率は、県税や地方交付税など県がその年に自由に使える財源のうち、借金返済額に当たる公債費の実負担が占める割合で、18%以上の水準になると起債許可団体となる。
公債費の管理を徹底するため、許可団体には「公債費負担適正化計画」の策定が義務付けられる。
県は、計画を逸脱しなければ、国との協議で、事業実施などはおおむね認められるとみている。
公共事業などの実施が事実上、国の管理下に置かれることになり、県にとって自由度は下がる。
県財政を巡っては19年に、貯金に当たる財源対策的基金が22年度末に枯渇すると予測されるなど、危機的状況が判明した。
県は23年度を期限に、5年間の「行財政改革行動計画」を策定し、補助金削減や職員給与カットなどの歳出歳入改革を進めた。
21、22年度決算で連続して収支均衡を達成した上、中越地震並みの災害に対応できる230億円を基金に積み立てることができた。借金返済の原資を確保するめども付いたという。
計画が目標を達成したことで、財政健全化が一段落したという印象を抱いた県民は多いだろう。
しかし、県は起債許可団体から抜け出す時期を38年度決算としており、財政健全化の取り組みは今後も長期にわたる。
花角英世知事は、許可団体になることは財政危機が表面化した当初から織り込み済みとし、移行確定に先立つ記者会見で「このまま計画を進めていくという意味で、(県民生活に)特段の変化があるわけではない」と述べた。
ただ本県の移行は初めてで、都道府県の許可団体は現在、北海道と本県だけだ。県民生活との関わりにはもっと周知が必要だろう。
県の借金の返済は今後右肩上がりに増え、31年度には年間800億円近くに膨らむ。
財政規律を守りながら返済するには、毎年度の借金返済額に加え、計450億円程度を確保する必要があるという。
今後の金融政策によって地方債の利率が上昇すれば、利払いが増えて財政負担が膨らみ、公共事業の量などにも影響しかねない。
起債許可団体から抜け出すために、県は今秋、行財政改革行動計画に代わる出口戦略を示す。財政再建と県民生活の向上を両立するため知恵を絞らねばならない。
