学校は夏休みに入り、観光地や繁華街はにぎわいを見せている。大規模イベントやスポーツ大会が開催され、新型コロナウイルス感染拡大前のような歓声が響くようになっている。

 ただ、新型ウイルスの流行「第9波」の懸念が強まっている。感染状況を注視し、対策を講じていく必要がある。引き続き、警戒が欠かせない。

 厚生労働省は、全国の定点医療機関から7月17~23日の1週間に報告された感染者数が計6万8601人で、1定点医療機関当たり13・91人だったと発表した。

 2週連続で、1医療機関当たりの感染者数が、10人を超えた。季節性インフルエンザでは「注意報」の基準となる。

 本県の感染者数も4週連続で増えた。1医療機関当たり12・98人で、10人を超えたのは「5類」移行後、初めてだ。

 日本医師会の釜萢(かまやち)敏常任理事は7月の会見で「現状は第9波になっていると判断することが妥当だ」との見解を示した。

 厚労省の感染症部会は、新型ウイルスは全国的に増加傾向だとし、お盆ごろまでは増加が続く可能性を指摘した。

 新型ウイルスの感染症法上の位置付けは、5月に季節性インフルエンザなどと同じ5類になった。

 3年に及んだ感染対策が緩和され、観光庁が公表した6月の宿泊旅行統計の速報では、国内ホテル・旅館の宿泊者数が感染禍前の2019年6月より増えた。プラスに転じるのは3年5カ月ぶりだ。

 だが油断は禁物だ。21年と22年は、人の往来が増える夏に、大きな流行の波が起きた。

 5類移行で、流行監視は感染者の全数把握から定点把握になり、見えない流行が懸念されている。

 政府は5類移行後に新型ウイルスに対応できる医療機関を増やすとしているが、現状はまだ限られており、さらに患者が増えた場合に混乱が起こる可能性がある。

 猛暑のため熱中症で病院に運ばれる人も増えている。

 救急車到着後も搬送先がすぐに決まらない「救急搬送困難事案」や医療逼迫(ひっぱく)を招かないよう政府や自治体、医療機関は連携し、必要な対応を進めてもらいたい。

 乳幼児がかかりやすい夏風邪「ヘルパンギーナ」も流行している。免疫を持たない乳幼児が増え、感染対策の緩和で一気に広がったという。免疫力が下がった大人が感染する可能性もある。

 5類に移行したとはいえ、専門家は、高齢者には注意を払う必要があるとする。マスク着用は個人の判断に委ねられているが、帰省などで重症化リスクの高い高齢者に接する際には着用が有効だ。

 手洗いや換気も大事だ。発熱などの症状がある場合は無理をしないで外出を控えるといった対応を一人一人が心がけたい。