限られた税収入を自治体同士が奪い合い、過剰な返礼品競争が続いている。地域の活性化を図る趣旨に立ち戻り、政府は制度を抜本的に見直してもらいたい。

 ふるさと納税制度に基づく自治体への2022年度の寄付総額が9654億円となり、3年連続で過去最高を更新した。寄付件数も5184万件と過去最多だった。

 制度ができた08年度に81億円だった寄付総額は18年度に5千億円を突破、20年度以降は年1千億円超のペースで増えている。本年度は1兆円を超す公算が大きい。

 人口や企業が少なく税収が足りない地方にとっては、財政面で無視できない収入源になった。

 納税するとお得感のある返礼品を受け取れるため、物価高による家計への影響を軽減しようと、日用品や食品などの入手が目的の利用が増えたとみられる。

 本県全体の寄付総額は312億円で全国10位、金額、件数ともに過去最多だった。自治体別で額の最多は燕市で全国20位だった。

 ただし、新潟市は4億5千万円の寄付額に対して、新潟市民が他の自治体に寄付した市税流出額は17億7千万円に上った。

 流出額の75%は地方交付税で補塡(ほてん)されるが、寄付の半分は返礼品の経費などに使われるため減収分を補えず、実質2億円程度が赤字になる計算だ。

 住民サービスに充てるべき納税額の半分ほどが外部に流れ、自治体に入っていないことになる。将来的に住民生活への影響はないかが懸念される。

 返礼品競争の背景には、新たな納税者を獲得するとともに、他の市町村に流出する住民税分を補う目的もあるだろう。

 牛肉や海産物などの人気返礼品に恵まれた自治体には有利だが、アピール力の弱い市区町村は税収減に苦しむことになりかねない。

 所得が多いほど節税効果のある制度にも「金持ち優遇」との批判がある。格差の拡大を助長している面があるのではないか。

 都市部には制度利用に積極的な高所得者が多く、住民税などの減収が著しい。さらに東京23区などは財政が豊かとみなされ、地方交付税による減収分の補塡もない。

 政令市の市長会が昨年、寄付に定額の上限を設けるなどの見直しを要望したのはもっともだ。

 制度を巡っては、多額の寄付を得た大阪府泉佐野市が特別交付税を減額され、その取り消しを国に求めて提訴している。自治体間競争の弊害といってもいい。

 総務省は10月から制度のルールを変更し、地場産品に限るなどの返礼品の基準を一層厳格化する。地域活性化に多くを充てるよう経費を抑制する仕組みも導入する。

 生まれ育ったふるさとや、応援したい地方自治体に貢献するにはどうしたらいいか。制度が定着した今、考え直す時期にきている。