もともとは野営用のテントを指す言葉だったようだ。「パビリオン」である。1970年の大阪万博の展示施設を指す用語として広く知られるようになった。当時は未来を想起させるユニークな外観が話題になった
▼あれから半世紀余り。2025年大阪・関西万博に参加する国や地域のパビリオンが注目されている。と言っても、歓迎できない注目の集め方だ。資材価格の高騰などで建設手続きが遅れており、予定通り開幕できるか不安視される
▼あぜんとしたのは、日本国際博覧会協会が万博の工事従事者を残業規制から除外するよう政府に要望したことだ。働き方改革を目指した残業規制が建設業には24年4月に適用される。これで工事の遅れに拍車がかかると懸念してのことらしいが、時代錯誤も甚だしい
▼「万博のスローガンが『いのち輝く未来社会』って、ブラックジョークか」。社員約20人の建設会社を営む社長の声が先日の紙面に載っていた。同じ記事には、闇残業の横行を懸念する在阪ゼネコン幹部の声もあった
▼21年の東京五輪・パラリンピックでは会場建設に絡んで違法な時間外労働が相次ぎ、死亡事故や過労自殺も起きた。立場の弱い人が国家的事業の犠牲になるような悲劇は、もうたくさんだ。日本の国際的なイメージも傷つきかねない
▼建物を簡素化する案も示されている。簡素な施設でも、仮想現実(VR)の活用などで未来像を描くことは十分可能だろう。それこそが現代の万博に求められるのではないのか。