夏山シーズンに入り、多くの人が登山を楽しんでいる。しかし、山岳遭難は増えている。無理のない計画で安全な登山を心掛け、山の自然に親しみたい。
11日は、2016年に祝日に定められた「山の日」だ。日本山岳会などが制定を要望していた。山の日の意義通り「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」日にしたい。
登山には山から見る景色や植物観察など魅力は多い。一方で、低い山でも常に危険と隣り合わせであることを忘れないでほしい。
22年に全国で発生した遭難件数は、統計が残る1961年以降で最多の3015件に上った。遭難者は3506人だった。
新型コロナウイルス禍で閉鎖されていた山小屋や登山道が再開された影響もあり、前年より380件、431人それぞれ増えた。
死者・行方不明者は前年比44人増の327人で、その約7割を60歳以上が占めた。
遭難の原因として、計画の甘さが指摘される。体力的に無理な計画を立てたり、技術的に難易度の高い山に入ったりして遭難するケースが見られる。
登山届の提出は必須だ。余裕のある計画で、体力的にきつくなったら引き返す勇気も求められる。夏は体力の消耗が激しく、熱中症にも気を付けねばならない。
本県や長野県などは、登山ルートを必要な体力度(10段階)や技術的難易度(5段階)で評価した「山のグレーディング」を、県のホームページなどで公開している。入山前に活用してほしい。
不十分な装備も遭難原因に指摘される。日帰りの予定でも、不測の事態に備えてライトや非常食を持参することが不可欠だ。天候の急な変化にも注意したい。
衛星利用測位システム(GPS)を使い、自分の位置情報を他人と共有できる地図アプリの利用が、登山者の間に広がっている。
遭難した場合、正確な居場所が特定できるため早期発見につながる。間違いやすい登山道を示すこともできる。
ただ、地図アプリは電池切れの心配もある。紙の地図も忘れずに携帯することが欠かせない。
世界遺産に登録された富士山では、外国人客が増え、大量のごみが放置されたり、トイレで寝泊まりしたりするマナー違反が大きな問題になっている。
ルールを守って、環境保護の大切さも山を通して学びたい。
