焼け焦げて落ちた屋根、熱でゆがんだ建物が火災のすさまじさを物語る。なぜ多くの命が奪われたのか、悲劇を繰り返さないためにも徹底的に捜査し、原因を究明してもらいたい。

 村上市の三幸製菓荒川工場で11日深夜に起きた火災で、複数ある棟のうち1棟が全焼し、働いていた6人が死亡した。

 亡くなった人のうち4人は清掃作業担当の60代と70代のアルバイト女性だった。

 ほかの2人は製造担当の20代の男性社員とみて、警察が確認を急いでいる。

 4人の女性たちは、清掃作業を通して長年、地元の工場を支えてきた。深夜に働く傍ら孫の面倒を見る人もいた。仕事仲間や集落の人に慕われていた。

 犠牲者は全員が、その家族や地域にとってかけがえのない存在だったろう。突然命を奪われた悲しみはいかばかりか。

 工場は三十数人が働き、午後11時半ごろからほとんどの製造ラインが停止した。棟の中央部付近から出火したとみられ、煎餅の焼き場から燃えかすが転がったようだとの情報もある。

 警察の調べでは、工場内は停電し真っ暗になった。4人は鼻や口の内側にすすが付いていて、煙に巻かれた可能性がある。

 4人は出入り口の防火シャッター付近に倒れており、シャッター脇に避難用の扉があった。

 消火活動に当たった村上市消防本部によると、工場は燃えやすい資材が多い上、内部が区画されていた。進入口を見つけるのが困難だったという。避難経路はどうなっていたのだろう。

 出火当時の現場の状況も気に掛かる。

 110番通報は午後11時50分ごろで、火災を検知した警備会社からの連絡だった。

 火を扱う工場で、スプリンクラーや消火器などでの初期消火の体制はどうだったのか。

 気になるのは、荒川工場での火災の多さだ。1988~2019年に部分焼4回、ぼや4回の計8件の火災があった。煎餅を乾燥させる乾燥機内と焼き窯に堆積した煎餅くずが炭化して発火するなどしていたという。

 村上市消防本部が20年9月に行った立ち入り検査では、避難誘導灯や自動火災報知器の一部作動不良などの不備があった。

 工場側は改修したとの報告書を提出したというが、この点も改めて調べる必要がある。

 消防による消火活動では近くの防火水槽のほとんどが枯渇し、離れた消火栓や用水を利用した。荒川工場は敷地面積が広く、複数の工場が隣接する地域にある。そうしたエリアの消防体制についても検証したい。

 会社側は火災を受けて「再発防止、安全管理の徹底に努める」とのコメントを出し、社員説明会も行った。だがそれにとどめず、記者会見などを開いて状況を丁寧に説明してほしい。

 県内には交代制で深夜も稼働する工場は他にもある。万一火災や事故が発生すれば、地域に与える影響は大きい。危険が潜む場所はないか、安全への目配りは十分か。点検が必要だ。