被害がどこまで広がるのか、深刻な事態に言葉を失う。一刻も早く全容をつかみ、被災者の救援に全力を尽くしてほしい。

 米ハワイ・マウイ島で8日に山火事が起きてから15日で1週間となり、これまでに100人を超える死者が確認された。

 米国の山火事の犠牲者としてはこの100年で最も多い。

 死者数の確定にはなお時間がかかるとみられ、最終的に200~300人に達する恐れがある。

 携帯電話の通信状態は改善しつつあるものの、連絡がつかない住民は千人を超えている。

 できるだけ早く、多くの無事が確認されることを願いたい。

 悔やまれるのは、避難の呼びかけなどの災害情報が、住民に十分に伝えられていなかったことだ。

 地元当局によると、ハワイ州には津波などの災害を知らせる警報サイレンがあるが、州と郡のいずれにも作動させようとした形跡がなかった。避難準備を促す通知が届かなかったとの証言もある。

 情報が届けば、もっと多くの人が助かった可能性はあるだろう。

 出火原因は分かっていない。山火事が起きた8日の前後に強風で電柱が倒れ、切れた送電線が原因になったと疑う声もある。

 何が大惨事を招いたのか解明しなくてはならない。教訓を世界で広く共有する必要がある。

 壊滅的な被害を受けた島西部のラハイナは、約9平方キロが焼け、住宅を中心に2200以上の建物が損壊した。

 旧豊栄市出身で長年現地で暮らす長尾真智子さんは、火の粉が吹き付ける中を逃げ、「あと30分遅れていたら死んでいた」と共同通信の取材に恐怖を語った。

 渋滞で動けずにいるところを火に囲まれ、車を乗り捨て海に飛び込んだという人もいる。

 歴史的景観を誇る街並みが焼失し、現地の失望は計り知れない。

 日本政府は総額200万ドル(約2億9千万円)規模の支援を表明した。被災した人々へ、日本からも思いを寄せていきたい。

 マウイ島では今月、島の8割が異常な乾燥状態になっていた。専門家は火災拡大の背景に、急速な乾燥やハリケーンによる強風といった複合的な要因があったとの見方を示している。

 近年は世界各地で猛暑となり、大きな森林火災が続発している。

 今年は7月にギリシャのロードス島で、6月にはカナダでも大規模な山火事が起きた。

 2019年に発生し、野生動物に甚大な被害があったオーストラリアの森林火災も記憶に新しい。

 国連のグテレス事務総長は「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が来た」と警告し、気候変動対策の強化を求める。

 災害の発生を食い止めたい。それには国際社会が一致して対策に取り組むことが必須だ。