女性への抑圧を強めていることを深く憂慮する。これでは旧タリバン政権と何も変わっていない。国際社会は改善へ動くよう粘り強く働きかけねばならない。

 アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権が、首都カブールを制圧し復権してから2年となった。

 暫定政権を承認した国は一つもない。女性の権利を奪い教育や就労の制限を強めているからだ。

 暫定政権は政権掌握後には、国際社会からの承認を得るために、2001年に崩壊した旧政権との異なる印象をアピールし、女性の人権尊重や融和を訴え「包括的なイスラム政権」を樹立すると表明していた。

 ところが、女子教育で日本の中学・高校に当たる中等教育を再開せず、昨年12月には大学教育も停止した。女性は原則小学校にしか通えない状況だ。

 就業の面では、国連と非政府組織(NGO)での女性の出勤を禁じた。今年6月には国内の全美容院に閉鎖命令を出した。

 旧国軍側との戦闘が終結し治安は一定程度回復したものの、独自解釈するイスラム法に基づき、宗教警察は女性の服装の取り締まりを強化している。

 女性抑圧政策は旧政権と同じだとの指摘が出るのは当然だ。

 国内の人権活動家らは、各国へ支援を訴える。国際刑事裁判所(ICC)に人道に対する罪で捜査を求める動きも出ている。

 各国は経済制裁を科している。アフガンは元々、国家予算の多くを国際社会の支援に頼っており、国民の貧困は深刻な状態だ。

 世界食糧計画(WFP)は人口の3分の1以上の1530万人が10月にかけ深刻な食料危機に陥ると予測している。

 アフガンが再び「テロの温床」となることも懸念される。

 タリバンは20年の米国との和平合意で駐留米軍撤退と引き換えにテロ組織との関係を断絶すると誓ったが、国際テロ組織アルカイダと密接な関係を維持している。

 国連報告書によると、約20のテロ組織が活動している。敵対する過激派組織「イスラム国」(IS)のテロも続いている。

 米国がタリバン復権からの2年間に計上した援助予算は23億5千万ドル(約3400億円)に上る。国民生活を改善するためだが、タリバンの懐に入りかねないとして、米議会が監視強化や透明性確保を要求したのはもっともだ。

 日本へは多くのアフガン人が逃れて来ており、一部は難民に認定されている。

 しかし、日本政府の支援が不十分なため生計を立てる見通しが立たず、迫害の恐れがある危険な母国に帰った人も少なくない。

 政府はしっかりと予算を付け、日本国内で安心して暮らせる受け入れ体制を構築してもらいたい。