戦況は膠着(こうちゃく)状態に陥っている。国際社会は粘り強く停戦を働きかけ、これ以上の戦禍の拡大を防がねばならない。
ロシアがウクライナに侵攻し、24日で1年半となった。
米紙は両軍の死傷者が計50万人に迫っているとする米政府の見方を報じている。死者はロシアが約12万人、ウクライナが約7万人と推計されている。
国連人権高等弁務官事務所の統計では、8月時点で民間人の死者は9400人を超えた。627万人が国外避難した。
ウクライナでは、侵攻当初に首都キーウ近郊のブチャで多くの民間人が虐殺された。ミサイル攻撃が続き多数が犠牲になっている。
検察当局は、子どもの死者は502人に達したと発表した。国際人道法違反である学校や病院などへの攻撃を、ロシア軍は即座にやめるべきだ。
ロシアがウクライナから多くの子どもを連れ去ったことも見過ごすことはできない。
7月末に公表されたロシアの報告書によると、ロシアが避難民だとしているウクライナからの子どもは70万人を超える。
ウクライナは、保養名目などで子どもを親元から強制分離し、ロシアで養子縁組するなど同化を図っていると非難している。
ロシアのリボワベロワ大統領全権代表(子どもの権利担当)はプーチン大統領に、親の同意を得て保養地に子どもを送ったなどとする報告書を提出し、連れ去りを正当化したが、言語道断だ。
ウクライナ軍が6月に反転攻勢して以降、欧米諸国はウクライナへの武器支援を強め、戦車や戦闘機が徐々に高性能化している。米国は非人道的兵器のクラスター(集束)弾も供与した。
だが、ロシア軍の強固な防衛線に阻まれ、領土の奪還は進んでいない。戦闘は長期化し泥沼の様相を呈している。
両国が無人機による攻撃を増やしていることも懸念される。
ウクライナ軍は7月以降、無人機や無人艇(水上ドローン)で、モスクワの高層ビル群やクリミア半島への攻撃を強めている。
ロシア軍の中枢をたたき混乱させることが効果的だとの指摘もある。ただ、攻撃拡大はさらなる緊張を生み出しかねない。慎重さが求められる。
ロシア軍も自軍の死傷者増大を避けるために、無人機を幅広く活用しており、依存を一層高めていくとみられる。
ゼレンスキー大統領は、和平交渉の前提としてロシア軍の完全撤退など10項目の「平和の公式」を提唱しているが、プーチン氏は拒絶している。
武器支援を強めるだけでは、戦争終結への展望は開けない。両者を話し合いのテーブルにつかせることが国際社会の責務だ。
