ただでさえ暑いのに、多くの小学生は大汗をたらし、机に向かっているのか。夏休みが終わり、宿題提出の時期である。とりわけ自由研究が切ないという子もいるだろう

▼公益社団法人発明協会が催す「全日本学生児童発明くふう展」は、夏休みなどの自由研究や発明、工作の傑作を選ぶコンテストだ。今春、特許庁長官賞に輝いた、東京の男子小学生の作品は「CO2吸収ドローン」だった

▼動画を見ると小さな無人機が空中を飛び回り、空気中の二酸化炭素を吸着材で取り込んでいく。手作り感たっぷりの空の掃除機だ。実用レベルかは分からない。でも「ぼくは本気で温暖化を止めたいです!」と話す男の子の目はキラキラしていた

▼120年の伝統を誇る発明協会は「戦後日本のイノベーション100選」を発表している。日本が世界に影響を与えた発明やビジネスモデルの多彩さに驚く。トップ10には携帯音楽プレーヤーや温水洗浄便座に並び、食品で唯一、インスタントラーメンがあった

▼1958年の8月25日、世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」が発売された。発明した安藤百福は13年後、カップ麺も生み出した。いま、世界で年間1100億食以上が生産される

▼その即席のうまさは新しい食文化に育った。新潟市は外食のラーメン同様、カップ麺の消費額も全国トップを競う。「もっと手軽に」が安藤の信念だった。発明家の小学生と同じく、身近な願いや純粋な夢の大切さをこの夏休み明けにかみしめたい。

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