なじみのスナックが閉店した。長岡・殿町で43年。新型ウイルス禍を何とか乗り越えたが、客足は思うように戻らなかった。店主のママも年を重ね、潮時と決断した
▼初めて訪れたのは30年も前になる。右往左往していた駆け出し時代。「とにかく原稿を書け」「取材先に食い込め」「今が勝負だ」。酔った先輩からよく聞かされた。年の近い同僚とは朝方まで大騒ぎした
▼そんな職場の「飲みニケーション」も最近は機会が減っている。感染禍が拍車をかけた。日本生命保険が2021年に行った調査では、飲みニケーションが「不要」と答えた人は6割で、4割の「必要」を初めて上回った
▼コンプライアンス意識の高まりも理由ではないかと思う。カウンターの机をたたきながら後輩に大声を上げ、カラオケを強いるかつての先輩は今ならパワハラと非難されかねない。飲み会での言動には十分気を付けないといけない時代だ
▼とはいえ、飲み会には効用もある。相手との距離が縮まるし、ストレス発散にもなる。酔った先輩から教えてもらったことは数え切れない。仕事のノウハウや心構え、処世術。人生に必要な知恵のいくつかは、飲み会で酩酊(めいてい)しながら学んだ
▼ただ時代の変化には対応しなければ。飲み会をしなくても、その効用を得る方法はないものか。ママと最後の別れをした後、泥酔した頭で考えてみた。良い知恵は浮かばなかった。今度先輩に相談してみようか。もちろん飲みながら。なじみのスナックはもうないけれど。