満州で撮影した家族写真。右端が酒井さんで、幼い弟を抱いているのが父の藤一郎さん
満州で撮影した家族写真。右端が酒井さんで、幼い弟を抱いているのが父の藤一郎さん
自身の戦争体験について語る酒井和美さん=五泉市橋田

 「満州の太陽は大きい。朝昇る時は金色、沈む時は真っ赤で、牛も馬もみんな体が桃色になるんだ」。新潟県五泉市の酒井和美さん(91)は幼いころ、父の藤一郎さんの話に胸を躍らせた。後にその通りの情景を目にした満州(現中国東北部)で、戦禍に巻き込まれるとは思いもよらなかった。

 藤一郎さんは五泉や新津、白根などの出身者からなる「西宝(せいほう)開拓団」の先遣隊。1942年には、当時10歳の酒井さんら橋田村(現新潟県五泉市橋田)で暮らす家族8人も現在の中国黒竜江省チチハル市付近に渡る。

 9人そろって暮らす穏やかな日々が続き、酒井さんは開拓団本部の一角にある学校にも通った。地平線に沈む夕日は大きく、「走って...

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