失敗に終わっても、地域の平和と安全を脅かす行為に変わりなく、看過できない。日本を含む国際社会は、繰り返される北朝鮮の暴挙を止める手だてを講じなければならない。
北朝鮮の朝鮮中央通信は、国家宇宙開発局が24日未明、北西部東倉里(トンチャンリ)の西海(ソヘ)衛星発射場から新型衛星運搬ロケットで軍事偵察衛星の再打ち上げを行ったが、失敗したと報じた。
失敗の原因は、3段目の飛行中に非常爆発システムにエラーが生じたためという。5月末に続いての失敗だ。10月に再び打ち上げるとしている。
日本政府は全国瞬時警報システム(Jアラート)で、北朝鮮はミサイルを発射し、日本上空を通過したもようだと速報した。ミサイルは複数に分離し、このうち一つが沖縄本島と宮古島の間の上空を通過した。
分離したミサイルは、いずれも北朝鮮が予告した区域外に落下したとみられる。どこへ落ちるかは分からず、危険性を改めて印象付けたと言える。
国連安全保障理事会は25日、緊急公開会合を開いた。日本と米国が、弾道ミサイル技術を使った発射を禁じた安保理決議に違反すると非難したのは当然だ。
北朝鮮は、米国に対する自衛権の行使だと正当化した。
5月末から3カ月足らずで北朝鮮が再打ち上げを行ったのは、米韓の軍事動向の把握が困難なため、上空からの監視態勢を早期に築く必要性があったとされる。
米韓が軍事演習を繰り返し圧力を強める中、演習が侵攻に替わる瞬間を捉えられねば致命的だとし、低い探知能力の補完を急いでいるとみられている。
心配なのは、失敗とはいえ脅威が確実に高まっていることだ。
国家宇宙開発局は、前回の不具合を克服できたとし、技術の向上に自信を見せた。背景にはロシアの支援も指摘される。
米政府高官は「発射のたびに北朝鮮は学習し、技術を改善している」と警戒している。「衛星」でも、米本土を脅かす大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発に直結するとの危機感もある。
バイデン政権は、「前提条件なしに北朝鮮と対話する」として繰り返し呼びかけているものの、北朝鮮が応じる気配はない。
日米韓3カ国は先日、米キャンプデービッドで開かれた首脳会談で、北朝鮮を巡る抑止力、対処力の強化で一致した。一方、北朝鮮の「衛星」発射は、日米韓の結束強化への反発だとの見方もある。
北朝鮮と関係が深い中国は、「関係国による意義ある対話」が必要だと強調してきた。
日米韓は首脳会談で中国を名指しで批判したが、北朝鮮の暴挙を止めるには、中国を取り込んで対処する努力が欠かせないだろう。
