長年にわたる多数の少年への性加害の実態が、はっきりと示された。放置していた事務所は責任を免れない。被害者の尊厳回復のため、真摯(しんし)な謝罪と救済を急がなくてはならない。

 ジャニーズ事務所創業者で2019年に死去したジャニー喜多川前社長による性加害問題を巡り、外部専門家の「再発防止特別チーム」は、喜多川氏が多数のジャニーズJr.に長期間、性加害を繰り返していた事実を認定した。

 事務所では1970年代前半から2010年代半ばまで行われ、少なく見積もっても数百人の被害者がいるとした。

 被害者の多さに驚きを禁じ得ない。声を上げられない当事者も多くいることだろう。

 ジャニーズJr.はCDデビューを目指す未成年が多い。事務所の社長でもあった喜多川氏は芸能プロデューサーとして、その生殺与奪権を一手に握っていた。

 チームの調査報告書は、性加害の根本原因が喜多川氏の性嗜好(しこう)異常にあり「一方的な強者・弱者の権力勾配のある関係性」の下で未成年者に行ったとする。極めて悪質と言えよう。

 21年に死去した喜多川氏の姉で事務所名誉会長の藤島メリー泰子氏が「徹底的な隠蔽(いんぺい)を図ってきた」と指弾した。事務所が見て見ぬふりをしたことも許されないことだ。不作為が、被害を拡大させたことは言うまでもない。

 現社長の藤島ジュリー景子氏は5月に動画で謝罪はしたが、前社長の死を理由に性加害の事実認定を避けた。

 報告書は、「なかったことにする」という意識が役職員の間で継続していたと指摘し、社長辞任を含む解体的な出直しがないと、信頼回復は困難だとした。

 社長はじめ事務所は厳粛に受け止め、被害者と向き合うべきだ。

 残念なのは、交流サイト(SNS)などで、告発者への誹謗(ひぼう)中傷が過熱していることだ。

 自分が応援する対象を否定されたと感じ、個人的な正義感や怒りから投稿しているのだろう。しかし、誹謗中傷は勇気を持ち被害を証言した当時者の尊厳を踏みにじる行為だと自覚してほしい。

 報告書は、テレビ局など「マスメディアの沈黙」も被害を拡大させたと指摘した。メディアが正面から取り上げないことで、「事務所が隠蔽体質を強化していった」と強調している。

 被害に長年耳を傾けなかったことを反省し、私たちメディアも重く考えていかねばならない。

 この問題では4日に、国連人権理事会の専門家が同じように被害実態を公表した上で、政府が主体的になり救済するよう求めた。

 被害者も30日、救済に国の介入を求めた。事務所だけの問題とせず、政府は速やかに必要な対策を講じねばならない。