今年は台風が連続して日本列島を襲った。九州・沖縄や西日本、東海地方などで暴風や大雨の被害が相次いだ。
9月から10月にかけて台風の接近、上陸が多くなる。災害に備え、命を守る行動を再確認したい。
8月に発生した台風6号と7号は、いずれも自転車並みのゆっくりとした速度で進み、各地で影響が長期化した。夏に発生する台風特有の動きの遅さだ。
6号は、沖縄県に進んだ後に東寄りに進路を変えて九州に接近するなど、不規則な動きをした。「迷走台風」は予報が難しく、思わぬ被害を出すことも少なくない。
宮崎県小林市や鳥取市などで、最高レベルの避難情報となる「緊急安全確保」が発表されるなど、各地の自治体で避難指示が出た。局地的な豪雨をもたらす線状降水帯の発生も相次いだ。
近年の台風は大型化、強力化しているといわれる。地球温暖化で、海面水温が高い状態が続いていることが背景とみられる。
エネルギー源となる水蒸気が豊富に補充され、海面水温が高いほど台風の勢力は強くなるという。
2021年に公表された国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書は、1分間の平均風速が50メートル以上の強い台風やハリケーンなどの発生割合が過去40年間で増加している可能性が高いと指摘している。
ピークに達する緯度も北に移っていると考えられている。発達したまま日本に近づけば甚大な被害を及ぼす。厳重に警戒しなくてはならない。
台風では高温への対策も心がけたい。本県は今夏、台風などの影響で局地的に暖かく乾燥した風が吹き、高温になるフェーン現象などで気温が高い状態が続いた。
熱中症の危険性が極めて高くなり、「熱中症警戒アラート」も連日出ている。農産物や畜産などにも影響が広がった。
今後も強い台風が襲来する可能性はある。台風に伴い大雨、洪水、暴風、高波、河川の氾濫、土石流などが発生しやすくなる。まずは家庭や職場で台風災害への備えを点検したい。
食料品、医薬品、貴重品などをリュックサックにまとめる。気象庁や自治体が発表する防災気象情報はスマートフォンやラジオで入手できるようにし、避難場所を確認しておきたい。避難所の設備や備蓄の点検も必要だ。
19年9月に千葉県の房総半島を襲った台風15号では大規模停電が長期間続いた。千葉市で最大9万4千軒超が停電し、復旧には最長で20日間程度かかった。
数十年に一度の、経験したことがないような災害の危険性を伝える「特別警報」は、運用開始から10年がたった。特別警報でなくとも各種警報が発令されたら、危険性を正しく認識して行動したい。
