クマによる被害が多発する時季になった。今年はより警戒を強め、一人一人が身を守ることを意識した行動を心がけたい。

 南魚沼市の畑で3日、70代の夫婦がクマに襲われ、顔や腕を負傷した。県内の人身被害は、7月に湯沢町で男性がけがをしたのに次いで今年2件目になる。

 県は1日に、クマの餌となるブナの実が凶作と予想されることから、県独自のクマ出没警戒警報を発令した。

 発令は2020年以来だ。南魚沼市での被害は、警戒警報を発令した直後だった。改めて警戒するよう注意を促したい。

 ブナの実が凶作なら、クマが餌を求め人里に出没する可能性が高い。クマの活動が活発になる早朝や夕方は、山に入ることを控えるようにしたい。

 また、ブナが並作から豊作だった年の翌年は、クマの出没・目撃件数が増える傾向にあるという。昨年は並作だったので、一層の警戒が求められる。

 前回警戒警報を出した20年度は、19年ぶりに死者が出たことを含め人身被害が17件21人と過去最多に上った。被害はいずれも9月以降に発生している。

 直近5年の人身被害も9~11月に集中している。警戒を強めて、被害をできる限り少なくするよう対策を講じねばならない。

 本年度の目撃件数は8月31日時点で平年並みの499件であるものの、子連れのクマの目撃情報が多いという。

 県は餌が不足しなかった昨年度までの2年間で出産が多かったとみている。子連れの母グマは特に凶暴で注意が必要だ。

 これからは暑さが和らぎ、登山やキノコ狩りなどで山へ入る機会が増えるだろう。鈴やラジオなど音が出る物や、クマ撃退スプレーの携行を忘れないでもらいたい。

 注意したいのは、クマの出没は山間部だけではなく平野部でも相次いでいることだ。

 クマに遭遇しても慌てて行動するとクマを刺激しかねない。背中を見せて逃げるのではなく、ゆっくり後ずさりすることだ。もし襲ってきたら、うつぶせになり両手で首を守る姿勢が有効だ。

 子どもたちが、いざという時にこうした行動ができるよう講習を行うことなども必要だろう。

 最近は過疎化による里山の荒廃で集落との緩衝地帯がなくなり、クマが人里に近づきやすくなったと指摘される。人里に餌が豊富にあると学習したクマは、人間を恐れくなったとも言われる。

 生ごみを放置しないことや、柿や栗といった果実を実らせたままにしないことなど各世帯は対策を徹底せねばならない。

 人間とクマの生息域を分け共存できるよう、各地で里山の復活など自然環境を豊かにする取り組みも急ぎたい。