「小さな巨人」といえば新潟市出身の漫画家、水島新司さんの「ドカベン」に登場する明訓のエース、里中智を思い浮かべる往年のファンは多いだろう
▼バスケットボール男子ワールドカップ(W杯)に出場した新発田市出身の富樫勇樹選手は現実世界の小さな巨人だ。167センチの身長ながら司令塔として活躍。2メートルを超える相手に立ち向かい、見事にパリ五輪の切符を手にした
▼さて、こちらは名実ともに「巨人」の風格が漂ってくる。186センチ、116キロの堂々たる体格。フランスで8日に開幕するラグビーW杯に出場する、新潟市秋葉区出身の稲垣啓太選手だ
▼3大会連続の出場で、日本で開かれた前回2019年大会のスコットランド戦で挙げた勝ち越しトライは、記憶に新しい。その年は日本代表のスローガンだった「ONE TEAM(ワンチーム)」が流行語大賞に選ばれるなど日本中を熱狂させた
▼今大会の初戦は10日のチリ戦だ。渡欧前、本紙の取材に「優勝を目指している。勝負事で一番上を目指さないのは理解できない」と話した。ポジションのプロップは「支柱」という意味。まさしくチームの柱として、最前列でスクラムを組む
▼座右の銘は、米国の作家レイモンド・チャンドラーの小説に登場する探偵フィリップ・マーロウの名言「強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない」だという。強くて優しく「笑わない男」稲垣選手が、富樫選手に続いて日本に感動を届けてくれるに違いない。